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M世代の韓国エンタメウオッチャー・K-POPゆりこと、K-POPファンのZ世代編集者が韓国のアイドル事情や気になったニュースについてゆるっと本音で語る【K-POPゆりこの沼る韓国エンタメトーク】。韓国エンタメ初心者からベテランまで、これを読めば韓国エンタメに“沼る”こと間違いなし!
今回のテーマは「音楽番組や音楽チャートの『1位』は、今も大事な指標なのか?」。あまり順位を出さない日本とは対照的に、韓国の音楽番組は「誰が今のトップか」を決める場。その結果がアーティストのキャリア、そして事務所の運営や予算計画にまで影響します。ファンによる組織的な応援活動「スミン」の中身から、「1位」を巡って動くお金と構造まで。シビアすぎるK-POP“1位争い”の裏側を読み解きます。
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):先に結論からお話ししますと、K-POPグループにとっての「1位」は大きな意味があります。最近ブレイクしているRESCENEは、発売から約2年の時を経て、過去に出した『LOVE ATTACK』という曲がリバイバルヒット。ついに韓国でMelonチャート1位を獲得しました。その際、メンバーが喜びの様子を配信したのですが、みんな大号泣。特に中小事務所所属のアイドルにとってチャート1位は悲願なのだと思います。
矢野:SNSでもあの号泣シーンはかなり拡散されていましたね。そこに至るまでの時間が報われた瞬間、という感じがしてグッときました。
ゆりこ:そして音楽番組の1位。こちらは、もしかしたら日本の人からするとあまりピンとこないかもしれません。なぜなら日本の音楽番組は長いこと「順位をつけないスタイル」が定着しているからです。でも韓国の音楽番組は、その週の「1位」を決めて大々的に発表します。特にKBSやSBS、MBCという韓国の地上波3局と音楽専門チャンネルMnetが放送する主要音楽番組での成績は重視されます。「1位を取ったか否か」でその後のキャリアが変わってくるといっても過言ではありません。
矢野:以前、1位を取ることで、その後の番組や音楽イベントの出演料が変わることもあると聞きました。
ゆりこ:そう、「ファンダムの力」を測る指標の1つになっています。身もふたもない話ですが、どのぐらいのお金や人数が動くのか?ということです。新人、若手グループであれば、チャートや音楽番組の順位は死活問題。音盤(CD)、音源(ストリーミング)などどんなチャートでも、1つの番組でもとりあえず「1位」を取っておきたいところです。今後の運営や、グループの存続にも直結しかねません。
矢野:ステータスでもあり、社外への営業ツールとして機能するということですね。
矢野:でもその番組、終わっちゃいましたよね? SNSで騒がれていたような。
ゆりこ:そうなんです。2025年11月11日の放送をもって「今年のシーズンは終了」と発表されたのですが、中小事務所のアイドルを応援する人の間ではかなりの阿鼻(あび)叫喚でした。それが、つい今年の6月に復活したんですよ。運営会社も変更、YouTubeチャンネル『THE K-POP』、TikTokライブでも同時に世界配信するという、かなり今っぽい体制に生まれ変わっています。
矢野:「希望の場」が、形を変えて戻ってきたということですね。
ゆりこ:そう思います。ただ、かなり一新されている印象で、今後どのような感じで続くのか今後の動きを見守りたいです。ここで話を戻しますが、音楽番組の1位は大手事務所に所属するグループとそのファンにとっても無視はできません。なぜなら社内の他グループとの予算配分や力の入れ具合に影響しかねないからです。
ゆりこ:そういうの、外からも分かってしまうんですよね。SNSの発達でますます可視化されてしまって。デビュー5、6年ぐらいのグループの場合、先輩と後輩の両方に挟まれて立場が気になるところです。「まだまだ健在」「勢いは止まっていない」ということを対外的にも社内にも証明する必要があります。
矢野:成績が振るわないグループの予算やリソースが、社内の別のグループに流れる可能性が高まるということですね。つまり、大手のグループであれ「1位」を取ることは大事、と。
ゆりこ:そうなんです。部署間における社内リソースと予算の取り合いは、会社員経験者であれば、誰もがイメージできると思います。まさにアレが芸能事務所内でも同様に起こる。「事務所の看板アーティスト」として社内にも認められることが大事なんです。
矢野:さすがにBTSやBLACKPINKレベルになると、韓国の音楽番組を回る必要がなくなりますし、気にする指標がアメリカのビルボードチャートやワールドチャートになるでしょうけれど……そこまで行けるグループはほんのわずかですよね。
ゆりこ:SHINeeも、もはや別のフェーズに移っているように思います。一方で、対照的だったのが今年の1月のEXOのカムバックです。久しぶりに国内活動に注力し、主要音楽番組の全てで1位を獲得し「グランドスラム」を達成。改めて存在感をアピール。ブランド力が復活しました。ベテラングループにとっても、「1位」は有効なのだな、と改めて思いました。
ゆりこ:加えて外せないのが「SNS・バイラルチャート」。つまりどれだけバズっているか、話題になっているかも加味されます。YouTubeの再生数はここに入ります。さらに、ファン投票もあるんです。各音楽番組がアプリを持っていて、そこでファンは毎日コツコツ投票します。そのファンからの1票も大事なのです。基本無料で参加できますが、ポイント経由などで投票権を買い増すこともできます。
矢野:CD購入だけではなく、ここでも課金する場面が出てくるんですね。
ゆりこ:そうなのです。私もつい、大好きなグループがカムバックした時には、ポチっと買ってしまうことがあります。そして番組によって重視する指標が違うのも面白いところ。CD売り上げを大事にする番組もあれば、ファンダム投票が有利に働く番組もあります。全体的にはストリーミング(音源)重視の傾向がありますね。
ゆりこ:「アンコールステージ」も、最近は単なる祝賀パフォーマンスではなく「実力が試される場」になってきています。アーティストとしては気が抜けないでしょうね。
矢野:あの場は「生歌」が基本ですからね。たまたま音が外れてしまったところを、SNS上で切り抜かれてアップされているのを見ました。「やっぱりうまい!」となるケースもあると思いますが。
ゆりこ:結構シビアな審査の場でもあるなと感じています。生放送で勝敗が決まり、実力を試される……韓国の音楽番組って、まるでスポーツ中継みたいですよね。
(※一部「サノク」といって事前に収録している部分もあります)
ゆりこ:そのまんま「ストリーミング」の略で、ファンが必死に各音源サイトの再生回数を回す行為です。YouTubeなどでMVの再生回数を伸ばそうとする行為は「ミュス(ミュージックビデオストリーミングの略)」と呼ばれますが、今回「スミン」でまとめて話します。
矢野:それって、ファンの皆さんは寝ずに再生し続けているのでしょうか、それとも何か……。
ゆりこ:基本になっているのは「総攻撃(총공/チョンゴン)」と呼ばれる、時間を決めて一斉にストリーミングする組織的な応援活動です。フォロワーの多いファンアカウントが「〇〇時〇〇分から〇〇時間、このプレイリストを再生してください」という“スミンリスト”を作って、SNSやファンコミュニティーで共有するんです。実際に不眠不休で聞き続けているというより、通勤・通学中や作業中の“ながら再生”を積み重ねていく感じです。ただし単純に同じ曲をリピートすればいいわけではなくて、機械的な再生と見なされて集計から弾かれないよう、該当曲ではない曲を挟んだプレイリストを何種類も作って回すのが基本。しかも韓国の音源サイトは、1つのIDが同じ曲を何回聞いてもチャートには限られた回数しか反映されない仕組みなので、複数の端末やアカウントを用意するファンもいます。かなり緻密な作戦なんですよ。曲がリリースされる瞬間から数週間、チャートの集計タイミングに合わせて計画的に動く。ファンにとっては半分「ミッション」のような感覚だと思います。
(※手法やルールには、ファンダムや個人差があります。上記は一例です。)
(※複数アカウントの利用は各サービスの利用規約に抵触するリスクがあり、過度なものは不正行為と見なされる可能性もあるため注意が必要です。)
矢野:えっ、すごい……。想像していたよりもはるかに綿密で、かつ複雑でびっくり。そこまで組織化されているとは知りませんでした。ただ、それだけ真剣に取り組んでいると、外から見たときに「本当に熱心なファンがやっていること」なのか「何か裏で不正な操作をしているのか」の見分けがつきにくくなりそうですね。
ゆりこ:まさにそこが「光と影」なんです。実際、マクロプログラムを使って再生回数を機械的に操作し、特定の曲の順位を操作する「音源サジェギ」という行為も、長年グレーなうわさとして業界内でささやかれてきました。いわゆるブローカーを使った、組織的な不正行為です。最近、日本でもテレビ番組で、組織的にSNSのいいね数やリポスト数を増やす裏ビジネスが報道されていましたが、あれに近い状態だと思ってください。
矢野:実際に韓国で不正行為が発覚したり、摘発されたりした例はあるんですか?
ゆりこ:実は実際に見つかって処罰を受けた例は少ないです。2025年に、あるソロ歌手の元所属事務所の代表ら11人が、大量のパソコンや不正に取得したアカウントを使ってストリーミング回数を機械的に操作したとして、ソウル中央地裁で有罪判決を受けました。正直なところ、氷山の一角でしょうね。こうした問題を受けて、韓国の主要音楽サイトはチャートの集計方法を変更するなど改善を図っています。
矢野:「本当に聞かれている数字」と「表に出る数字」がかい離していると、業界側も気付いていたということですね。
ゆりこ:ファンの懸命な応援行為と、会社ぐるみの違法行為は全くの別物なのですが、それだけ数字を作るのに必死であるということは間違いないでしょう。そしてどうにか「リアルなデータ」を反映させようと、あの手この手で対策を練るチャート運営会社。放っておくと信用問題に関わりますからね。
ゆりこ:しかもこの「1位」の意味合いが、世代によって変わってくるんですよね。新人にとっては1位とは「目標」そのもの。でも中堅グループになると、「まだ旬である証拠」でいわば通過点。そしてベテランになると、また意味合いが変わって「ファンとの絆を再確認するモチベーション」になっていく。
矢野:「1位」を取る目的が、グループの置かれている状況によってこんなにも異なるのですね。
ゆりこ:そして言わずもがなですが、音楽番組や音源チャートで1位を取らなくても、アーティスト活動を続けている韓国の歌手は大勢います。しかし、大人数かつ運営費用もかかるアイドルグループに関しては、いまだにキャリアや存続に関わるものだという認識です。
矢野:「もう韓国で1位とか関係ない」と言えるグループは、それまでに1位を何度も取っている。圧倒的な実績がないと、1位を追い続けるループから抜け出せないというのは、なかなか皮肉な現実です。その反面、ファンの経済的・精神的な負担の大きさも気になります。
ゆりこ:私も個人のファンが何かを大きく犠牲にしたり、無理したりすることには警鐘を鳴らしたいです。純粋に楽しめているうちは、外野が口出しするのは無粋ですが……。
矢野:「1位」はあらゆる立場の人が見てもその結果の大きさや意味などが分かりやすい定量的な指標の1つですよね。ただ、当たり前ですが「1位」は1つしかありません。だからこそ価値があるという意見も十分理解できるのですが、たった1つのものをずっと追求し続けるのはとても難しい。そして、1位以外は無価値というわけでも決してないはずです。無理して短期的な目標を達成したとしても、それが続かなければ後々しんどい……。
ゆりこ:瞬発的に頑張って作る「1位」も大事。何よりそういう時って、ファンとしてはとても楽しいんですよ。アドレナリン出まくりますし。でも長年、いろんなグループをファンとしても運営側としても見てきて思うのは、一部のファンだけが無理をして数字を作ろうとするグループは結局のところ、いつかは限界が来るということです。
矢野:自分のペースで長く応援できる状態を保つことが、結果的にはグループを一番支えることになる。「1位獲得」というシビアな戦いの裏側に、地味だけど大事な真実があるのかもしれません。
この記事の執筆者: K-POP ゆりこ
音楽・エンタメライター。雑誌編集者を経た後、渡韓し1年半のソウル生活を送る。帰国後は、K-POPや韓国カルチャーについて書いたりしゃべったりする「韓国エンタメウオッチャー」として、雑誌やWebメディアなどでの執筆活動や、韓国エンタメ情報ラジオ番組『ぴあ presents K-Monday Spotlight』(TOKYO FM)でパーソナリティーを務めるなど幅広く活躍中。
今回のテーマは「音楽番組や音楽チャートの『1位』は、今も大事な指標なのか?」。あまり順位を出さない日本とは対照的に、韓国の音楽番組は「誰が今のトップか」を決める場。その結果がアーティストのキャリア、そして事務所の運営や予算計画にまで影響します。ファンによる組織的な応援活動「スミン」の中身から、「1位」を巡って動くお金と構造まで。シビアすぎるK-POP“1位争い”の裏側を読み解きます。
今でも音楽番組やチャートでの「1位」は大事な指標?
編集担当・矢野(以下、矢野):今回はK-POPシーンの基本に立ち戻るテーマなのですが、今でも音楽番組やチャートでの「1位」は大事な指標なのでしょうか?K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):先に結論からお話ししますと、K-POPグループにとっての「1位」は大きな意味があります。最近ブレイクしているRESCENEは、発売から約2年の時を経て、過去に出した『LOVE ATTACK』という曲がリバイバルヒット。ついに韓国でMelonチャート1位を獲得しました。その際、メンバーが喜びの様子を配信したのですが、みんな大号泣。特に中小事務所所属のアイドルにとってチャート1位は悲願なのだと思います。
矢野:SNSでもあの号泣シーンはかなり拡散されていましたね。そこに至るまでの時間が報われた瞬間、という感じがしてグッときました。
ゆりこ:そして音楽番組の1位。こちらは、もしかしたら日本の人からするとあまりピンとこないかもしれません。なぜなら日本の音楽番組は長いこと「順位をつけないスタイル」が定着しているからです。でも韓国の音楽番組は、その週の「1位」を決めて大々的に発表します。特にKBSやSBS、MBCという韓国の地上波3局と音楽専門チャンネルMnetが放送する主要音楽番組での成績は重視されます。「1位を取ったか否か」でその後のキャリアが変わってくるといっても過言ではありません。
矢野:以前、1位を取ることで、その後の番組や音楽イベントの出演料が変わることもあると聞きました。
ゆりこ:そう、「ファンダムの力」を測る指標の1つになっています。身もふたもない話ですが、どのぐらいのお金や人数が動くのか?ということです。新人、若手グループであれば、チャートや音楽番組の順位は死活問題。音盤(CD)、音源(ストリーミング)などどんなチャートでも、1つの番組でもとりあえず「1位」を取っておきたいところです。今後の運営や、グループの存続にも直結しかねません。
矢野:ステータスでもあり、社外への営業ツールとして機能するということですね。
中小事務所所属のアイドルにとって「救いの場」となる番組も
ゆりこ:はい。だからこそ象徴的だったのが『THE SHOW』という音楽番組の存在です。SBS系列チャンネルが2011年から放送してきた番組で、最大の特徴は「その回に出演したアーティストの中だけで1位候補を決める」というルール。大手事務所の看板グループが出演しないことも多く、中小事務所所属のアイドルにとって、数少ない「救いの場」になっていました。矢野:でもその番組、終わっちゃいましたよね? SNSで騒がれていたような。
ゆりこ:そうなんです。2025年11月11日の放送をもって「今年のシーズンは終了」と発表されたのですが、中小事務所のアイドルを応援する人の間ではかなりの阿鼻(あび)叫喚でした。それが、つい今年の6月に復活したんですよ。運営会社も変更、YouTubeチャンネル『THE K-POP』、TikTokライブでも同時に世界配信するという、かなり今っぽい体制に生まれ変わっています。
矢野:「希望の場」が、形を変えて戻ってきたということですね。
ゆりこ:そう思います。ただ、かなり一新されている印象で、今後どのような感じで続くのか今後の動きを見守りたいです。ここで話を戻しますが、音楽番組の1位は大手事務所に所属するグループとそのファンにとっても無視はできません。なぜなら社内の他グループとの予算配分や力の入れ具合に影響しかねないからです。
大手所属グループも「1位」を無視できないワケ
矢野:確かに、SNSで「後輩グループが出てから、先輩グループのプロモーションがなおざりになっているのでは?」「明らかに事務所に優遇されているグループ、そうでないグループがいる」といった不満の声を見たことがあります。ゆりこ:そういうの、外からも分かってしまうんですよね。SNSの発達でますます可視化されてしまって。デビュー5、6年ぐらいのグループの場合、先輩と後輩の両方に挟まれて立場が気になるところです。「まだまだ健在」「勢いは止まっていない」ということを対外的にも社内にも証明する必要があります。
矢野:成績が振るわないグループの予算やリソースが、社内の別のグループに流れる可能性が高まるということですね。つまり、大手のグループであれ「1位」を取ることは大事、と。
ゆりこ:そうなんです。部署間における社内リソースと予算の取り合いは、会社員経験者であれば、誰もがイメージできると思います。まさにアレが芸能事務所内でも同様に起こる。「事務所の看板アーティスト」として社内にも認められることが大事なんです。
矢野:さすがにBTSやBLACKPINKレベルになると、韓国の音楽番組を回る必要がなくなりますし、気にする指標がアメリカのビルボードチャートやワールドチャートになるでしょうけれど……そこまで行けるグループはほんのわずかですよね。
ゆりこ:SHINeeも、もはや別のフェーズに移っているように思います。一方で、対照的だったのが今年の1月のEXOのカムバックです。久しぶりに国内活動に注力し、主要音楽番組の全てで1位を獲得し「グランドスラム」を達成。改めて存在感をアピール。ブランド力が復活しました。ベテラングループにとっても、「1位」は有効なのだな、と改めて思いました。
音楽番組の「1位」はどのように決まる?
矢野:そういえば、音楽番組の1位ってどのように決まるんですか? CDの売り上げや、ストリーミングの再生数など、あらゆるチャートを総じて見るというところまでは知っています。ゆりこ:加えて外せないのが「SNS・バイラルチャート」。つまりどれだけバズっているか、話題になっているかも加味されます。YouTubeの再生数はここに入ります。さらに、ファン投票もあるんです。各音楽番組がアプリを持っていて、そこでファンは毎日コツコツ投票します。そのファンからの1票も大事なのです。基本無料で参加できますが、ポイント経由などで投票権を買い増すこともできます。
矢野:CD購入だけではなく、ここでも課金する場面が出てくるんですね。
ゆりこ:そうなのです。私もつい、大好きなグループがカムバックした時には、ポチっと買ってしまうことがあります。そして番組によって重視する指標が違うのも面白いところ。CD売り上げを大事にする番組もあれば、ファンダム投票が有利に働く番組もあります。全体的にはストリーミング(音源)重視の傾向がありますね。
1位のグループにだけ許される「アンコールステージ」が実力試しの場に
矢野:ファンが一丸となって盛り上がることで、さらに熱を高める効果もありそうです。音楽番組では最後に1位を取ったアーティストだけ、「アンコールステージ」が許されるじゃないですか。あれもアーティスト、ファン双方にとって誇らしい瞬間なんだろうなと思います。ゆりこ:「アンコールステージ」も、最近は単なる祝賀パフォーマンスではなく「実力が試される場」になってきています。アーティストとしては気が抜けないでしょうね。
矢野:あの場は「生歌」が基本ですからね。たまたま音が外れてしまったところを、SNS上で切り抜かれてアップされているのを見ました。「やっぱりうまい!」となるケースもあると思いますが。
ゆりこ:結構シビアな審査の場でもあるなと感じています。生放送で勝敗が決まり、実力を試される……韓国の音楽番組って、まるでスポーツ中継みたいですよね。
(※一部「サノク」といって事前に収録している部分もあります)
再生回数を左右する「スミン」、再生数稼ぎを巡る光と影
矢野:先ほど「ストリーミング重視の音楽番組が多い」という話が出ましたが、気になるのが「スミン」という言葉。ストリーミングサービスの数字を左右し、音源チャートを動かす重要な“推し活”だと聞いています。ゆりこ:そのまんま「ストリーミング」の略で、ファンが必死に各音源サイトの再生回数を回す行為です。YouTubeなどでMVの再生回数を伸ばそうとする行為は「ミュス(ミュージックビデオストリーミングの略)」と呼ばれますが、今回「スミン」でまとめて話します。
矢野:それって、ファンの皆さんは寝ずに再生し続けているのでしょうか、それとも何か……。
ゆりこ:基本になっているのは「総攻撃(총공/チョンゴン)」と呼ばれる、時間を決めて一斉にストリーミングする組織的な応援活動です。フォロワーの多いファンアカウントが「〇〇時〇〇分から〇〇時間、このプレイリストを再生してください」という“スミンリスト”を作って、SNSやファンコミュニティーで共有するんです。実際に不眠不休で聞き続けているというより、通勤・通学中や作業中の“ながら再生”を積み重ねていく感じです。ただし単純に同じ曲をリピートすればいいわけではなくて、機械的な再生と見なされて集計から弾かれないよう、該当曲ではない曲を挟んだプレイリストを何種類も作って回すのが基本。しかも韓国の音源サイトは、1つのIDが同じ曲を何回聞いてもチャートには限られた回数しか反映されない仕組みなので、複数の端末やアカウントを用意するファンもいます。かなり緻密な作戦なんですよ。曲がリリースされる瞬間から数週間、チャートの集計タイミングに合わせて計画的に動く。ファンにとっては半分「ミッション」のような感覚だと思います。
(※手法やルールには、ファンダムや個人差があります。上記は一例です。)
(※複数アカウントの利用は各サービスの利用規約に抵触するリスクがあり、過度なものは不正行為と見なされる可能性もあるため注意が必要です。)
矢野:えっ、すごい……。想像していたよりもはるかに綿密で、かつ複雑でびっくり。そこまで組織化されているとは知りませんでした。ただ、それだけ真剣に取り組んでいると、外から見たときに「本当に熱心なファンがやっていること」なのか「何か裏で不正な操作をしているのか」の見分けがつきにくくなりそうですね。
ゆりこ:まさにそこが「光と影」なんです。実際、マクロプログラムを使って再生回数を機械的に操作し、特定の曲の順位を操作する「音源サジェギ」という行為も、長年グレーなうわさとして業界内でささやかれてきました。いわゆるブローカーを使った、組織的な不正行為です。最近、日本でもテレビ番組で、組織的にSNSのいいね数やリポスト数を増やす裏ビジネスが報道されていましたが、あれに近い状態だと思ってください。
矢野:実際に韓国で不正行為が発覚したり、摘発されたりした例はあるんですか?
ゆりこ:実は実際に見つかって処罰を受けた例は少ないです。2025年に、あるソロ歌手の元所属事務所の代表ら11人が、大量のパソコンや不正に取得したアカウントを使ってストリーミング回数を機械的に操作したとして、ソウル中央地裁で有罪判決を受けました。正直なところ、氷山の一角でしょうね。こうした問題を受けて、韓国の主要音楽サイトはチャートの集計方法を変更するなど改善を図っています。
矢野:「本当に聞かれている数字」と「表に出る数字」がかい離していると、業界側も気付いていたということですね。
ゆりこ:ファンの懸命な応援行為と、会社ぐるみの違法行為は全くの別物なのですが、それだけ数字を作るのに必死であるということは間違いないでしょう。そしてどうにか「リアルなデータ」を反映させようと、あの手この手で対策を練るチャート運営会社。放っておくと信用問題に関わりますからね。
新人には目標、中堅には通過点、ベテランには絆の再確認——変化する「1位」の意味
矢野:ここまでの話を聞いていると「1位」を巡る駆け引きも、それを支えるファンの熱量も、想像以上にシビアだなと感じます。ファンが必死になる理由は、推しが事務所に見捨てられないように、次のカムバックの予算をつけてもらうための成果を、自分たちの手でプレゼントしようという構造があるからなのだと理解しました。ゆりこ:しかもこの「1位」の意味合いが、世代によって変わってくるんですよね。新人にとっては1位とは「目標」そのもの。でも中堅グループになると、「まだ旬である証拠」でいわば通過点。そしてベテランになると、また意味合いが変わって「ファンとの絆を再確認するモチベーション」になっていく。
矢野:「1位」を取る目的が、グループの置かれている状況によってこんなにも異なるのですね。
ゆりこ:そして言わずもがなですが、音楽番組や音源チャートで1位を取らなくても、アーティスト活動を続けている韓国の歌手は大勢います。しかし、大人数かつ運営費用もかかるアイドルグループに関しては、いまだにキャリアや存続に関わるものだという認識です。
矢野:「もう韓国で1位とか関係ない」と言えるグループは、それまでに1位を何度も取っている。圧倒的な実績がないと、1位を追い続けるループから抜け出せないというのは、なかなか皮肉な現実です。その反面、ファンの経済的・精神的な負担の大きさも気になります。
ゆりこ:私も個人のファンが何かを大きく犠牲にしたり、無理したりすることには警鐘を鳴らしたいです。純粋に楽しめているうちは、外野が口出しするのは無粋ですが……。
矢野:「1位」はあらゆる立場の人が見てもその結果の大きさや意味などが分かりやすい定量的な指標の1つですよね。ただ、当たり前ですが「1位」は1つしかありません。だからこそ価値があるという意見も十分理解できるのですが、たった1つのものをずっと追求し続けるのはとても難しい。そして、1位以外は無価値というわけでも決してないはずです。無理して短期的な目標を達成したとしても、それが続かなければ後々しんどい……。
ゆりこ:瞬発的に頑張って作る「1位」も大事。何よりそういう時って、ファンとしてはとても楽しいんですよ。アドレナリン出まくりますし。でも長年、いろんなグループをファンとしても運営側としても見てきて思うのは、一部のファンだけが無理をして数字を作ろうとするグループは結局のところ、いつかは限界が来るということです。
矢野:自分のペースで長く応援できる状態を保つことが、結果的にはグループを一番支えることになる。「1位獲得」というシビアな戦いの裏側に、地味だけど大事な真実があるのかもしれません。
この記事の執筆者: K-POP ゆりこ
音楽・エンタメライター。雑誌編集者を経た後、渡韓し1年半のソウル生活を送る。帰国後は、K-POPや韓国カルチャーについて書いたりしゃべったりする「韓国エンタメウオッチャー」として、雑誌やWebメディアなどでの執筆活動や、韓国エンタメ情報ラジオ番組『ぴあ presents K-Monday Spotlight』(TOKYO FM)でパーソナリティーを務めるなど幅広く活躍中。












