記事の内容
「令和7年版高齢社会白書」の発表を見ると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、家計収入の全てが公的年金・恩給による世帯は41.7%にのぼる。
収入不足への対応としては、「節約等により支出を減らす」と答えた人が54.3%となっている。高齢者は預金をたんまり持っていると喧伝(けんでん)されがちだが、いずれの世代においても貧富の差が激しくなる中、節約しながら年金だけで暮らしている人たちは決して少なくないのだ。
「子どもたちが学校に行っているときは学童保育を利用しているようです。ごくまれにどうしようもないときだけ『助けて』と連絡がありますから、そういうときは孫を迎えに行ってうちで食事をさせることもあります。私はその程度の付き合いで十分なんですが、困るのが夏休み」
基本的には夏休みも公立の学童保育に預けてはいるのだが、子どもたちが飽きてしまうのだという。そのため、昨年夏も上の子だけ、ときおりシズカさん夫婦が面倒を見た。下の子は当時、保育園に通っていたので、夏休みもそのまま預けていた。
「今年は二人とも学童だけど、やはりずっといると飽きてしまう。遊びに連れて行ってやりたいけど、なかなか時間がとれないと息子夫婦に泣きつかれてしまったんです。だけど正直言って、昨年で経済的にも精神的にも懲りてるんですよ、私たち」
「実際には余裕なんてありません。息子と娘、二人とも私立大学を卒業させて、夫は50歳を過ぎたら出向となって給料も減額。そんな中、奨学金も借りずに卒業できただけありがたいと思えと言いたいくらい。子どもに恩を着せたくないから言っていませんでしたけどね」
預かるのはいいけど、子どもたちに特別な食事は作らないと息子に言うと、「もちろんいいよ、それで」ということだった。
「私たちはだんだん食べる量も少なくなってきていますし、あまり油っぽいものは食べられない。でも孫たちは唐揚げ食べたい、とんかつ食べたいというわけですよ。それだけではなく、公共のプールや遊園地に連れて行けば、体力も神経も使う。最初の1週間で疲れ果てました」
息子に週1日にしてもらえないかと言ったところ、「子どもたちはプールや遊園地でめいっぱい遊べてすごく楽しそうなんだ。なんとか2日でお願いしたい」という返事だった。
「そこでしょうがない、白状しましたよ。お金、気力、体力がもたないと。8歳年上の夫は2年前に大病して、今も検査に通う日々です。私もこの春、ぎっくり腰で動けなくなったことがある。しかも息子は一銭も払う気がない。時々大福を2つくらいもってきてごまかしている。私たちはもう若くない、日々成長している孫たちの動きにはついていけないんだよと言うと、さすがに息子は驚いていました」
「あるわけないでしょ、返すのが大変だろうから子どもに借金を背負わせたくなかったの。残っていた家のローンはお父さんの退職金を充てたから、今は借金はないけど余裕もないのよとついに洗いざらいぶちまけました」
そのとき息子の口から出たのは、「老後も不安だな」という一言。ありがとうと言ってほしかったわけではないが、息子は親の老後の負担を自分が背負わなければいけないことへの不安を口にしたのだ。これにはさすがのシズカさんも黙っていられなかった。
「誰が私たちの面倒を見ろと言った? もともとそんなつもりはないから安心しなさい。それとこの夏の孫の受け入れは拒否します。二度と来ないで」
そう言って息子を追い出した。孫の顔を見られなくなるのはつらいかもしれないが、あんな息子の役に立とうと思ったことが悔やまれるとシズカさんは、いまだ怒りがおさまらない様子だった。
<参考>
・「令和7年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」(内閣府)
文:亀山 早苗(フリーライター)
明治大学文学部卒業。女性の生き方を軸に、家族、夫婦関係、働き方などをテーマに取材・執筆を続ける。くまモンの追っかけ歴は長く、近著に『くまモン力』がある。
収入不足への対応としては、「節約等により支出を減らす」と答えた人が54.3%となっている。高齢者は預金をたんまり持っていると喧伝(けんでん)されがちだが、いずれの世代においても貧富の差が激しくなる中、節約しながら年金だけで暮らしている人たちは決して少なくないのだ。
夏休み、孫を預かるのは嫌ではないけれど
電車で20分ほどのところに住んでいる息子一家とふだんから交流があるというシズカさん(67歳)。39歳の息子と36歳の妻は共働きで、9歳と7歳の子がいる。「子どもたちが学校に行っているときは学童保育を利用しているようです。ごくまれにどうしようもないときだけ『助けて』と連絡がありますから、そういうときは孫を迎えに行ってうちで食事をさせることもあります。私はその程度の付き合いで十分なんですが、困るのが夏休み」
基本的には夏休みも公立の学童保育に預けてはいるのだが、子どもたちが飽きてしまうのだという。そのため、昨年夏も上の子だけ、ときおりシズカさん夫婦が面倒を見た。下の子は当時、保育園に通っていたので、夏休みもそのまま預けていた。
「今年は二人とも学童だけど、やはりずっといると飽きてしまう。遊びに連れて行ってやりたいけど、なかなか時間がとれないと息子夫婦に泣きつかれてしまったんです。だけど正直言って、昨年で経済的にも精神的にも懲りてるんですよ、私たち」
経済的余裕なんてないのに
というのも、シズカさん夫婦は年金のみで生活をやりくりしている世帯。昨年は孫一人預かっただけで食費や光熱費が跳ね上がった。ところが息子は「お母さん世代は貯金もあるし年金も高いよね」と言ったことがあり、どうやら親は経済的余裕があると考えているようだ。「実際には余裕なんてありません。息子と娘、二人とも私立大学を卒業させて、夫は50歳を過ぎたら出向となって給料も減額。そんな中、奨学金も借りずに卒業できただけありがたいと思えと言いたいくらい。子どもに恩を着せたくないから言っていませんでしたけどね」
預かるのはいいけど、子どもたちに特別な食事は作らないと息子に言うと、「もちろんいいよ、それで」ということだった。
子ども二人分の食事代が負担に
息子と話し合って、学童3日、シズカさん宅に2日ということで話がまとまった。ところが今回は二人。子どもとはいえ 、大人と同じものをほぼ同じような分量食べられる子たちだ。結局、昼食も夕食も、夫婦二人だけのときより倍近くになる。「私たちはだんだん食べる量も少なくなってきていますし、あまり油っぽいものは食べられない。でも孫たちは唐揚げ食べたい、とんかつ食べたいというわけですよ。それだけではなく、公共のプールや遊園地に連れて行けば、体力も神経も使う。最初の1週間で疲れ果てました」
息子に週1日にしてもらえないかと言ったところ、「子どもたちはプールや遊園地でめいっぱい遊べてすごく楽しそうなんだ。なんとか2日でお願いしたい」という返事だった。
「そこでしょうがない、白状しましたよ。お金、気力、体力がもたないと。8歳年上の夫は2年前に大病して、今も検査に通う日々です。私もこの春、ぎっくり腰で動けなくなったことがある。しかも息子は一銭も払う気がない。時々大福を2つくらいもってきてごまかしている。私たちはもう若くない、日々成長している孫たちの動きにはついていけないんだよと言うと、さすがに息子は驚いていました」
息子の一言に激怒
自分たちの世代の多くは奨学金を借りていたけど、自分が借りずにすんだのは親にそれなりの資産があるからだと思っていたと息子は言った。「あるわけないでしょ、返すのが大変だろうから子どもに借金を背負わせたくなかったの。残っていた家のローンはお父さんの退職金を充てたから、今は借金はないけど余裕もないのよとついに洗いざらいぶちまけました」
そのとき息子の口から出たのは、「老後も不安だな」という一言。ありがとうと言ってほしかったわけではないが、息子は親の老後の負担を自分が背負わなければいけないことへの不安を口にしたのだ。これにはさすがのシズカさんも黙っていられなかった。
「誰が私たちの面倒を見ろと言った? もともとそんなつもりはないから安心しなさい。それとこの夏の孫の受け入れは拒否します。二度と来ないで」
そう言って息子を追い出した。孫の顔を見られなくなるのはつらいかもしれないが、あんな息子の役に立とうと思ったことが悔やまれるとシズカさんは、いまだ怒りがおさまらない様子だった。
<参考>
・「令和7年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」(内閣府)
文:亀山 早苗(フリーライター)
明治大学文学部卒業。女性の生き方を軸に、家族、夫婦関係、働き方などをテーマに取材・執筆を続ける。くまモンの追っかけ歴は長く、近著に『くまモン力』がある。












