記事の内容
毎日とにかく暑い。日中の東京都心など日陰が少ない場所は、外をまともに歩ける状況ではない。高齢者を中心に緊急搬送が相次ぎ、東京都監察医務院によると、東京23区では熱中症の死者数が8月初旬の時点で100人を超えた。多摩動物公園(日野市)でも、熱中症の疑いでライオン3頭が死亡したという。
連日の猛暑下、汗だくの体を少しでも冷やしたくて屋内や電車内に入っても「冷房の効きが悪い」と感じる人は少なくないようで、「弱冷房車など不要」「強冷房車も用意して」などという声が次々と上がっている。
以前なら、冷房が効いた車内を寒く感じることが確かにあったし、女性を中心に弱冷房車の温度設定を心地よく感じる人も多かっただろう。
ところが近年は「冷房が全然効いていない。暑過ぎる」「熱中症になりかけた」という声がちまたにあふれ、湿度が高まり電車の窓ガラスが結露することも……。「弱冷房車があって助かる」一方で、「強冷房車こそ必要」という声が年々増えているように感じる。弱冷房車は、在来線だけではない。東海道・山陽新幹線は、2025年に「ひかり」で弱冷房車を試験導入。2026年も前年比6倍以上の本数で冷房の設定温度を通常の車両に比べて2度高く設定し、7月1日から8月31日まで試験導入している。これに関しても、「寒ければ着ればいい」「時代逆行」「(弱冷房車の)3号車は避ける」「体調不良者が出そう」と賛否の声が上がる。
例えば、暑季(3月〜5月)の平均気温で30度を下回る月はないタイの首都バンコク。BTS(高架鉄道)や地下鉄、ショッピングモールの冷房の設定温度は18~22度と強力で、流れる汗はすぐに止まり、次第に「寒さ」を感じ始める。また短距離でも徒歩移動する習慣がないタイでは、運賃が安いライドシェアのバイクタクシーが普及している。
筆者が先日訪れたエジプトも最高気温が40度近くになる暑い国。ギザのピラミッドエリアは砂漠地帯で屋根も少ないため日差しは強烈だが、内陸部では湿度が10~20%しかないため、夏の日中でも日陰に入ると涼しい。帰国後に「夏のエジプトは暑かったでしょ」とよく聞かれるが、「日本の方が蒸し暑くて不快」と答えている。
7月中旬から下旬にかけて、エジプトからトルコ、韓国(ソウルも猛暑だったが屋内の冷房はキンキンだった)を経由して帰国した筆者だが、関西空港の建物を出た瞬間に全身から汗が噴き出し、手のひらまでべたべたになってしまった。
それから電車に乗り込むも、弱冷房車でもないのに車内は蒸し暑く、気分が悪くなるほど。ここ数年、夏の海外旅行後は「空港に着いてから自宅にたどり着くまでが一番過酷」なのだ。
気象庁によると、東京都心の気温はクールビズ提唱翌年の2006年7月が日平均気温25.6度(最高気温の月平均28.6度)、8月は日平均気温27.5度(最高気温の月平均31.1度)だった。一方、2026年7月は最高気温の月平均が31.8度で、猛暑日は9日! 20年前と比較して、最高気温の月平均が3度以上も上昇しているのだ。
真夏の気温は毎年上昇しているというのに、冷房に対する姿勢や意識は20年前から変化していない。「冷房は体に悪い」からエアコンはよくないと信じ続け、熱中症の疑いで救急搬送される高齢者も多い。
加えて電気代の高騰だ。設定温度を下げるほど費用負担も増えるためか、鉄道会社によって冷房の効き具合に差を感じることもあり、あまりの暑さに「節電か?」と疑いたくもなる。またある時は、乗り込んだ路線バスがエンジン(冷房)を切って待機しており、蒸し風呂状態の車内で出発間際まで待たされたこともあった。
日本への一時帰国は「夏を避ける」という在外邦人も少なくないし、日本を訪れる外国人旅行者にも「日本の夏は蒸し暑くて厳しい」という声が広まりつつある。「クールビズ」や室温の設定温度「28度」は、もはや過去の話。環境省も、「熱中症警戒アラート」「熱中症特別警戒アラート」で熱中症予防を呼び掛けつつ、「28度は目安。冷房時の外気温や湿度、建物の状況、体調などを考慮しながら、無理のない範囲で冷やし過ぎない室温管理の取組をお願いします」としている。
とはいえ、今本当に必要なのは「冷やし過ぎない」より、「適度に冷やして熱中症を防ぐ」ことではないだろうか。猛暑が日常化した今、実情に即した冷房使用や温度設定の呼びかけを期待したい。
この記事の執筆者: シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。
連日の猛暑下、汗だくの体を少しでも冷やしたくて屋内や電車内に入っても「冷房の効きが悪い」と感じる人は少なくないようで、「弱冷房車など不要」「強冷房車も用意して」などという声が次々と上がっている。
弱冷房車はいつから?「強冷房車こそ必要」という切実な暑さ
鉄道の弱冷房車は、もともと「車内の冷房が効き過ぎて寒い」という利用客からの要望で1980年代半ばに導入されたのが始まり。近畿圏では「弱冷車」と呼ばれる。設定温度は基本、通常の車両より2度ほど高い。以前なら、冷房が効いた車内を寒く感じることが確かにあったし、女性を中心に弱冷房車の温度設定を心地よく感じる人も多かっただろう。
ところが近年は「冷房が全然効いていない。暑過ぎる」「熱中症になりかけた」という声がちまたにあふれ、湿度が高まり電車の窓ガラスが結露することも……。「弱冷房車があって助かる」一方で、「強冷房車こそ必要」という声が年々増えているように感じる。弱冷房車は、在来線だけではない。東海道・山陽新幹線は、2025年に「ひかり」で弱冷房車を試験導入。2026年も前年比6倍以上の本数で冷房の設定温度を通常の車両に比べて2度高く設定し、7月1日から8月31日まで試験導入している。これに関しても、「寒ければ着ればいい」「時代逆行」「(弱冷房車の)3号車は避ける」「体調不良者が出そう」と賛否の声が上がる。
「エジプトの方が涼しい?」日本と海外で違う、冷房への意識
アントニオ・グテーレス国連事務総長が「地球沸騰化の時代が到来した」と警告を発するように、この酷暑は日本に限った話ではない。ただし夏の海外で日本ほどの不快感に見舞われることは少ない。
例えば、暑季(3月〜5月)の平均気温で30度を下回る月はないタイの首都バンコク。BTS(高架鉄道)や地下鉄、ショッピングモールの冷房の設定温度は18~22度と強力で、流れる汗はすぐに止まり、次第に「寒さ」を感じ始める。また短距離でも徒歩移動する習慣がないタイでは、運賃が安いライドシェアのバイクタクシーが普及している。
筆者が先日訪れたエジプトも最高気温が40度近くになる暑い国。ギザのピラミッドエリアは砂漠地帯で屋根も少ないため日差しは強烈だが、内陸部では湿度が10~20%しかないため、夏の日中でも日陰に入ると涼しい。帰国後に「夏のエジプトは暑かったでしょ」とよく聞かれるが、「日本の方が蒸し暑くて不快」と答えている。
7月中旬から下旬にかけて、エジプトからトルコ、韓国(ソウルも猛暑だったが屋内の冷房はキンキンだった)を経由して帰国した筆者だが、関西空港の建物を出た瞬間に全身から汗が噴き出し、手のひらまでべたべたになってしまった。
それから電車に乗り込むも、弱冷房車でもないのに車内は蒸し暑く、気分が悪くなるほど。ここ数年、夏の海外旅行後は「空港に着いてから自宅にたどり着くまでが一番過酷」なのだ。
「クールビズ」「28度」が提唱された20年前より3度以上暑い
そもそも「クールビズ」は、2005年(平成17年)、地球温暖化対策の一環として政府が提唱した取り組み。過度な冷房に頼らず、さまざまな工夫で夏を快適に過ごすライフスタイルを呼び掛けるもので、冷房時の室温は28度が目安とされている。ただし、これは強制するものではない。気象庁によると、東京都心の気温はクールビズ提唱翌年の2006年7月が日平均気温25.6度(最高気温の月平均28.6度)、8月は日平均気温27.5度(最高気温の月平均31.1度)だった。一方、2026年7月は最高気温の月平均が31.8度で、猛暑日は9日! 20年前と比較して、最高気温の月平均が3度以上も上昇しているのだ。
真夏の気温は毎年上昇しているというのに、冷房に対する姿勢や意識は20年前から変化していない。「冷房は体に悪い」からエアコンはよくないと信じ続け、熱中症の疑いで救急搬送される高齢者も多い。
加えて電気代の高騰だ。設定温度を下げるほど費用負担も増えるためか、鉄道会社によって冷房の効き具合に差を感じることもあり、あまりの暑さに「節電か?」と疑いたくもなる。またある時は、乗り込んだ路線バスがエンジン(冷房)を切って待機しており、蒸し風呂状態の車内で出発間際まで待たされたこともあった。
日本の酷暑に嫌気、外国旅行者も避け始めている
弱冷房車に限らず「日本の冷房が弱い」ことは、真夏に海外へ行ったことがある人ほど実感するだろう。冷房が苦手な人たちへの配慮があるにせよ、今の猛暑を考えると「おかしい」レベルである。日本への一時帰国は「夏を避ける」という在外邦人も少なくないし、日本を訪れる外国人旅行者にも「日本の夏は蒸し暑くて厳しい」という声が広まりつつある。「クールビズ」や室温の設定温度「28度」は、もはや過去の話。環境省も、「熱中症警戒アラート」「熱中症特別警戒アラート」で熱中症予防を呼び掛けつつ、「28度は目安。冷房時の外気温や湿度、建物の状況、体調などを考慮しながら、無理のない範囲で冷やし過ぎない室温管理の取組をお願いします」としている。
とはいえ、今本当に必要なのは「冷やし過ぎない」より、「適度に冷やして熱中症を防ぐ」ことではないだろうか。猛暑が日常化した今、実情に即した冷房使用や温度設定の呼びかけを期待したい。
この記事の執筆者: シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに、取材、執筆、撮影など。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も。












