静岡の名門が総体4強へ
サッカーの全国高校総体(インターハイ)は29日、男子サッカーの準々決勝が福島県で行われ、4強が出揃った。静岡学園(静岡)は2点ビハインドから旭川実(北海道)に3-2で逆転勝ち。後半、貴重な同点ゴールを奪った沢井翼(3年)は手首に「7」と「10」が書かれたテーピングを巻いてプレー。負傷で欠場を余儀なくされたチームメートの思いも背負って日本一へ突き進む。
県予選で8得点を叩き出した男に、待望の大会初ゴールが生まれた。
2点ビハインドから坂本健悟(3年)が1点を返して迎えた後半27分、ゴールを背に長坂健太(3年)からパスを受けると、マークを剥がして反転。「これいけるな」。相手のプレッシャーが思いのほか弱く、前方にスペースが開く。ゴールへ前進し、密集地帯から左足でシュートを突き刺した。
「やっとか……」
今大会初ゴールは、チームを窮地から救う貴重な同点弾。ゴールが決まった瞬間は、喜びよりも安堵感に包まれた。
「自分としても価値あるものだった。この大会で成長を見せられたのは良かったです」。ピッチでは必死の形相でボールを追いかけた沢井。前半は思い通りにプレーできず、ハーフタイムには「もっとボールの受け方を考えろ」と川口修監督から奮起を促された。
指揮官のアドバイスから後半は「ボールが来る回数が多くなった」(沢井)。プレーに手応えを掴んだ中での同点ゴールだった。チームは後半終了間際に佐野泰聖(3年)が劇的ゴールを奪って逆転。後半途中にベンチへ下がっていた沢井も歓喜の輪に加わった。
県予選での圧倒的な活躍から沈黙が続いていた今大会。プレッシャーはあったかと問えば、「はい」とはにかみながら右を縦に振った。心身ともに追い込まれた一戦で掴んだ会心の勝利。激闘を終えた沢井には、清々しい表情が浮かんでいた。
頼れるキャプテンが離脱「ショックだった」
圧倒的な攻撃力を武器に優勝候補に連ねる名門も、今大会では苦境に晒された。10番を背負う松永悠輝(3年)、2年生ボランチ杉ノ原芽生の主力2選手が負傷で不在に。さらに激震が走ったのがキャプテンの足立羽琉(3年)の緊急離脱。初戦の大分戦で右足首を負傷。プレーが困難なほどの重傷を負った。
頼れるキャプテンだった足立の離脱に、沢井も「ショックだった」と動揺を隠せなかった。「足立はチームの心臓ですし、松永も苦しい状況でいい仕事をしてくれる。その2人がいないのはやっぱり難しい」。ただ、主力3人を欠くアクシデントは、裏を返せば一致団結のチャンスにもなる。
「主力3人がいないっていうことを理由に負けたくないし、自分はそうしたくない」。強い決意を秘めて戦った沢井。両手首に巻かれたテーピングには足立の背番号7と松永の10番の文字があった。「全員で付けよう」。保延昭良(3年)の発案からピッチに立つ選手の手首には“団結の印”が現れた。
「怪我人が出て、チーム状況的に難しかった。でも逆によりチームが1つにまとまったっていうのもあります」(沢井)。苦境でもピッチ上で息づいていたのは選手各々による「俺がやってやろう」といった意気込み。1人1人が最後まで諦めず、必死にボールに食らいつく。終盤、怒涛の攻撃を仕掛けて遂に逆転。ゴール前で泥臭く決めた佐野の得点は「まだいける」と戦っていたチームの思いが宿っていたようでもあった。
川口監督は「正直、想定以上のパフォーマンスを発揮してくれている」と目を丸くしながら称えた。「これもやっぱり日頃の練習の成果。真面目にこの子たちは努力し続けている。それを見てきているので。こういうチームっていうのは、こうやって苦しいゲームをものにするんだなって、そういう実感はすごくあります」。日頃の鍛錬を実らせた選手たちへ思いを馳せた。
「負傷者がいるんですけど、このチームで絶対日本一を取れると思っている。あんまりそこ(主力3人の不在は)は気にはしていない」。目線をまっすぐに、力強く言い放つ沢井にはすっかり自信がみなぎっていた。サッカー王国・静岡の名門が果たした快進撃は、まだまだ終わらない。
(THE ANSWER編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto)












