第108回全国高校野球選手権・神奈川大会で取材
第108回全国高校野球選手権は28日、甲子園大会に出場する代表49校が出そろった。近年は髪型の自由化やクーリングタイムの導入など、さまざまな変化がトピックに上がる。酷暑の中、導入が検討されているのが「7回制」だ。日本高野連の「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」は「可及的速やかに7イニング制の採用が望まれる」などとする最終報告書をまとめたが、現場からは反対の声も。子供を預ける親はどう考えているのか、取材した神奈川大会で聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・戸田 湧大)
21日に岐阜県で全国初の「酷暑日」(最高気温40度以上の日)となるなど、7月は全国的な猛暑に見舞われ、各地で熱中症対策が呼びかけられた。
神奈川大会も準々決勝が行われた22日は、横浜市の最高気温が35.3度を記録する猛暑日に。24日(準決勝)は33.9度で、今秋ドラフト1位候補に挙がる横浜のエース右腕・織田翔希投手(3年)は慶応戦で右足が攣ったかのような仕草を見せ、7回途中降板。今大会は足を攣る選手が目立ったように感じた。スタンドに日陰のない横浜スタジアムでは座っているだけでも大量の汗がにじみ、プレーしている選手はさらに過酷な環境だったであろうと推測できた。
昨年12月、「7イニング制等高校野球の諸課題検討会議」では、「可及的速やかに7イニング制を採用することが望まれる」とする最終報告書がまとめられた。熱中症対策、酷暑への対策は待ったなしの状況であるとし、教員の働き方改革や競技普及の効果にも期待できるとされているが、現場からの反対意見も多く、導入するかは未定のままだ。
子どもたちを日常的に支え、グラウンドに送り出す親はどう考えているのか。神奈川大会で聞いた。「私は野球を見るのが好きなので、子供の姿を長く見たいですね」と語ったのは、私学でスタメンとしてプレーする選手の母。熱中症リスクを理解した上で、「7回制」移行には難色を示した。
消える高校野球の醍醐味? 「9回の逆転劇が無くなるのは…」
部員80人を超える高校に所属する選手の母からは「夏でベンチ入りが20人は少ない」との意見も出た。「試合が短くなればそれだけ出られる子が少なくなる。9回で1人でも多く、チャンスが回ってくる場面があった方がいいと思います」。9回制を維持したまま、交代可能な人数を増やすことで、怪我や熱中症のリスクも軽減できるとの考えだ。
神奈川決勝まで勝ち上がった横浜、桐光学園は7試合を戦った。コールドなしと仮定すれば、7回制だと計14イニング短くなる。少しでも長く子供の晴れ舞台を見たい立場から「短い高校野球生活ですから……」とため息が漏れるのも理解できた。
高校野球の醍醐味が失われる可能性を案じる声も。「8回や9回の逆転劇が無くなるのは悲しい。実際に逆転した先輩たちを見てきたので」(強豪私学でプレーする選手の母)。2006年夏の準々決勝・帝京―智弁和歌山や2016年の2回戦・東邦―八戸学院光星など、甲子園に限定しても「9回制」だからこそ生まれたドラマも少なくない。
神奈川大会で話を聞けた保護者から、7回制を明確に支持する声は聞こえてこなかった。日本高野連は2024年夏の甲子園から、酷暑対策や選手の負担軽減を目的に「2部制」を導入。地方大会でも試合開始時間を考慮するなど、対策は講じている。それでも襲い掛かってくる夏の暑さは、選手を支える保護者達にとっても悩ましい問題だ。
(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)












