進学校・川和から西武へ…夏の予選後をどう過ごした?
夏の全国高校野球選手権が5日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。そして全国で、最後の夏を終えた高校生が進路選択を迫られる時期でもある。昨秋のドラフトで西武の育成4位指名を受けた濱岡蒼太投手は、東大合格者も輩出する進学校の川和(神奈川)で、早々に高卒プロ一本と進路を定めた。2年時から東海大相模や桐光学園といった強豪私立相手に好投し注目されていたが、最後の夏は登板機会が少なかった。そこからどのようにして、プロへの道をつかんだのか。
濱岡は「野球をする環境を比べて、川和を選びました」とはっきり言う。進学校であるかどうかではなく、自身で考えながら練習に取り組める環境が決め手となり川和に進んだのだ。3年生になった昨夏は県16強まで進出した。ところが濱岡は、チームが戦った4試合のうち2試合にリリーフし、2回2/3を投げただけ。最後に敗れた平塚学園との試合も、大勢が決したあと、4番手での登板だった。何が起きていたのか。
「当時もすごく聞かれました。采配批判も目について、僕も悔しい思いはあったんですけど……。監督からも相談されて、ピッチャー陣で話し合った結果です。次の横高(横浜)戦を見据えてという意味もありました。平塚学園に右打者が多くて、自分と相性が良くなかったのもあります」
この試合に勝てば、甲子園に出場した横浜と準々決勝でぶつかっていた。ただそれはかなわず、濱岡の高校野球は終わった。偏差値69の進学校・川和の選手たちは、ここから大学受験に本気で取り組んでいく。一方でプロ野球を目指す濱岡には、スカウトに見てもらう機会が少なかったのではないかという不安が残った。解決法を探すと、北海道で行われた「LIGAサマーキャンプ」に行きついた。
全国の高校3年を対象とした、個人参加の合同練習会とでも言えばいいだろうか。選手は4チームに振り分けられ、10日間にわたって連日試合を行う。米球界でみられる、学生選手がスカウトに能力をアピールするための「ショーケース」のような体裁だ。参加費用は約27万円。決して安いものではない。濱岡も「本当に悩んだんですけど……。最後の最後でエントリーさせてもらいました」と当時を振り返る。
「やっぱり夏にあまり投げられなかったので。不調だとかいろんなことを言われる中で、自分としても、もっと見てもらえる機会が欲しいなと思ったんです。まだ新しい取り組みなので、先にどうつながるかはわからなかったんですが……」。ファイナルの舞台は、日本ハムの本拠地、エスコンフィールド。濱岡はこのマウンドに立って自己最速の147キロを出した。
「プロのマウンドでこれだけできると見せられたのは、アピールにも、自信にもなったと思います。プロのスカウトがアマチュア選手のどこを見ているかはわかりませんが、球速は結構注目されているなと思っていたので」
最速160キロ左腕を見て感じた本質「絶対に理由がある」
秋になると真っ先にプロ志望届を提出し、調査書がNPB4球団から届いた。さらに後に入団する西武には、入団テストという形で投球を見てもらう機会があった。自身の様々な資質が、データとなって示されたのだ。
「フィジカルな部分はそんなに自信がなかったのもあって、飛びぬけた数字は出なかったんです。ただ後にドラフトの指名あいさつで、変化球の質、投げているボールの質が良かったと言われたのは自信になりました。プロ野球の世界から見ても、良いと言ってもらえたのは」
そして10月23日のドラフト会議。西武から育成4位指名を受け、プロ野球選手となった。春先は指のけががあり、実戦デビューは5月まで遅れたものの、現在は3軍で登板を重ねながら日々生まれる課題を消化している。
プロで最初に圧倒されたのは、技術ではなかった。「知識を得て、それをやってみるということが習慣化された高校時代を過ごしたので、ここで最初は知識を得すぎて、やることが増えちゃって……。プロ1年目で、何が自分に合っているとかの基準がなかったんです。苦労した部分も、勉強になった部分もあります」。解決のカギはずっと続けている野球ノート。現在の課題である投球テンポとコントロールを良くするためにはどうすればいいのかを書き出し、思考を整理していった。
そして、高校時代では考えられないような怪物との出会いも、ヒントを与えてくれている。取材した7月中旬、3軍では最速160キロ左腕の羽田慎之介投手が調整中だった。
「羽田さんの生活を全部見ているわけではもちろんないんですけど、すごく考えながらやっていて……。アマチュアの時は『背が高いから球も速いんだろうな』とか単純に考えていたんですけど、背が高くて腕が長いのはデメリットにもなりえるんです。そう考えると、才能だけでやっている人って絶対にいないよなと思います。結果を出している人には、絶対に理由があるんです」
この夏、川和の後輩たちの試合を球場で見る機会があった。強豪私立の武相にサヨナラ勝ちする場面に立ち会い「号泣しました」と笑う。自身の高校野球が終わってから1年、進んできた道に後悔はない。
「自分の球の質がいいと言われるのは、すごくありがたいこと。ただ、まだまだボールもそんなに速くないですし、どういう投手になっていくかは全然見えていません。それでも1軍に行くのに必要な要素に対して、課題は明確になっています」。根拠のある努力を積み上げられる環境で、夢に一歩ずつ近づいていく。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)












