BLACK SAMURAI 2026
日本バスケットボールを「世界基準」に引き上げたい。最高峰NBAで7季プレーしてきたクリッパーズ・八村塁の本気と覚悟を感じる5日間だった。自ら世界の舞台で学んだ経験をもとに設計した次世代アスリート育成プロジェクト「BLACK SAMURAI 2026」の一環として神戸でキャンプ、名古屋でサミットを実施。参加した選手やコーチがその意義を語った。
18歳以下の招待選手17人による真剣勝負を、約8100人のバスケファンが見守った。会場は八村が「日本で一番NBAに近いアリーナ」と評する名古屋市のIGアリーナ。8日の「GAME DAY」はテレビ朝日系の地上波でも生放送され、レポーターを務めた松岡修造さんの掛け声で「NBAは、夢じゃない!」と観客が声を揃えた。
両軍最多の31得点を挙げ、ベスト5にも選ばれた恒岡ケイマン(開志国際高3年)は昂然と胸を張った。
「『NBAは、夢じゃない。掴みに行け』ということを学べたし、自分を信じることも大事。本当にNBAは夢じゃないと分かった。ここが自分の夢の第一歩と考えて、本当に努力し、自分を信じてNBA選手になる、という気持ちでやっていきたい」
NBAを夢ではなく、身近な目標にする。それこそが八村が今回のサミットで目指したものだ。
昨年の「BLACK SAMURAI 2025」は3日間開催で、「THE CAMP」として男女約150人の中高生らを指導。その中で選抜された選手による試合が行われた。今年はコンセプトの違う2つのイベントを5日間にわたって実施した。
4、5日には神戸市のGLION ARENA KOBEで「Daiichi Life Group Presents BLACK SAMURAI KOBE CAMP(以下、KOBE CAMP)」を開催。昨年の「THE
CAMP」と同様、NBAマーベリックスでアシスタントコーチを務めるフィル・ハンディ氏をメインコーチとして招き、中高生約100人に世界基準のスキルとマインドセットを叩きこんだ。
IGアリーナに場所を移し、6日からの3日間は「BLACK SAMURAI SUMMIT 2026」を実施。こちらは日本バスケットボール協会(JBA)とタッグを組んで「最強の高校生」ら、U18のエリート選手17人を招待した。次世代を担う有望株をBリーグの現役ヘッドコーチらが直接指導。最終日の「GAME DAY」は「世界への登竜門になる40分」と銘打ち、世界の舞台につながる試合を目指した。
参加者が受けた衝撃「集中力が全く違う」
毎試合のように全米中継され、2万人もの観客が入るレイカーズ時代の経験から、八村は大舞台でも力を発揮することの重要性を体感した。「極限のプレッシャーの中で、自分を表現できるか。エゴをむき出しにして、コートの上で虎になれるか。観客の熱狂を力に変え、世界に己の才能を見せつけられるか」。1万人規模のアリーナでの開催も、地上波生放送も、そんな思いから実現した。
参加者にとっては世界に自分をアピールする絶好の場だ。会場にはスペシャルゲストとして、ゴンザガ大時代に八村を育てたトミー・ロイド氏も登場。現在は強豪アリゾナ大のヘッドコーチを務め、全米最優秀コーチ賞を複数回受賞している名将だ。恒岡はロイド氏から「いいプレーヤー」と褒められ、連絡先も交換できたと明かした。今後のキャリアに繋がる可能性は大いにある。
唯一KOBE CAMPから参加し、1on1トーナメントで優勝してサミット出場権を掴み取ったのが佐藤久遠(東山高2年)だ。1年時からウインターカップで活躍してきた逸材だが、5日間で“カルチャーショック”を受けた。
「集中力が全く違う。いつもは長く練習していると思うんですけど、1本1本のシュートであったり、パスであったり、セットプレーの遂行の部分であったり、本当に違いすぎてビックリしました」
技術的な面はもちろん、マインドセットにも大きな変化が起きた。「このサミットのテーマにもなっている『エゴ』の部分は、本当に意識していかないとやっていけない世界に飛び込もうとしている」。試合でも恐れずリング下に切り込むなど14得点。「アタックマインドがない選手は世界でもやっていけない」と強気の姿勢を貫き、ベスト5に選出された。
メディア公開はなかったが、昨年に引き続き、指導者向けのコーチング特別クラスも開催された。選手だけでなく、指導者も「世界基準」にならなければ世界で戦っていけない。それは八村とJBAが共通して持つ見解でもある。
U18日本代表のヘッドコーチを務め、今回はアシスタントコーチとしてサミットに参加した福岡大大濠高の片峯聡太監督は「私自身も自分の成長を加速させながら、指導力を高めていかなきゃいけない」と振り返る。
「育成年代の選手たちが本気でNBAを目指すと言う、それに絶対に蓋をしない。そんなの難しいぞっていう風なことを絶対に言わないというところから始めなきゃいけない。指導者や大人が選手たちの成長に蓋をしてしまう場面はやっぱり凄く多い。子どもたちが本気で目指すところに大人がどれだけサポート、準備、仕掛けができるのかが凄く大事なこと。
選手たちはコンディションをしっかり整えながら、食事をして、トレーニングをして、バスケットをして、というのをとにかくやる。でもそれが最適なものなのか、本当に目標に向けて必要なものかをしっかり整理して、大人が本気になって向き合ってあげなきゃいけない。指導者や大人がそういうマインドになっていかないといけないと発信してもらえた、そんなサミットになったと思います」
八村は自分の高校時代を振り返り、「NBA選手になりたいと言っていたが、周りにそういう人がいないし、誰に聞くかって言うと誰にも聞けなかった」と明かす。高校生の時に欲しかったロールモデルに、いま自分がなっている。その自覚と責任を持って、惜しみなく自身の知見と経験を伝えていく。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)












