Nellie Peyton Thando Hlophe
[ニューカッスル(南アフリカ) 6日 ロイター] - 南アフリカでは4月以降、反移民を掲げる抗議活動が複数発生し、数千人の移民労働者が国外退去や避難を余儀なくされた。その数週間後、東部クワズールー・ナタール州の製造業中心地ニューカッスルの衣料品工場を訪れると、並ぶミシンの多くが使われないまま放置されていた。
反移民団体「マーチ・アンド・マーチ」は、失業率が約33%に達する南アフリカ国民のために雇用機会を確保することを目的として活動を展開した。しかし実際には、地元のメーカー各社は移民労働者が去った後の欠員を埋めるのに苦労している。
ロイターが7月下旬に訪れた3つの工場では、経営者らが抗議活動によって従業員の12%から19%を失ったと語った。退職した外国人労働者の中には、需要が高い縫製技術を持つ人材も含まれていたが、多くの南アフリカ人は低賃金の仕事に就きたがらないという。
工場の事務職として働く29歳の南アフリカ人女性ムポ・ンコシさんは「工場の仕事は人気がない」と話した。
専門家の話では、移民労働者は地元住民が敬遠しがちな業種で働くケースが多い。労働力不足がどの程度広がっているかは不明だが、サトウキビ農園でも人手不足による欠員が報告された。
雇用労働省の広報担当者は、労働者不足の報告は把握していないとした上で、企業には同省の人材募集支援制度を利用するよう勧めている。
<技能不足説に反論も>
マーチ・アンド・マーチは6月30日を不法移民退去の期限と宣言し、それまでの数カ月にわたって反移民デモや自警団による攻撃が続いた。これにより、多くの移民が退避を余儀なくされた。
マーチ・アンド・マーチは、高い失業率をはじめとする南アフリカの経済問題の責任は移民にあると主張する。しかし、多くの研究者はその見方に賛成していない。マーチ・アンド・マーチは、雇用主がより低い賃金で働く外国人を好んで雇用していると批判している。
一方で工場経営者らは、自社の従業員の大半は南アフリカ人だと説明する。その上で、衣料産業で豊富な経験を持つ隣国エスワティニやレソト出身の熟練労働者も一部必要だと訴えている。
ニューカッスルで工場を経営するアレックス・リウ氏は「こうした技能を持つ人材を地元の労働者ですぐに置き換えることはできない」と語った。別の工場主であるロンフア・ヤン氏は、6月に約40人の外国人労働者を失ったため、地元従業員7人を対象とした研修プログラムを開始したが、資金面の制約からさらに多くの人材を訓練する余裕はないと明かした。
衣料・繊維業界の労働組合は、ニューカッスルの約1万5000人の繊維労働者のうち15%が抗議活動の間に離職したと推計している。
ただ、同組合のシヤボンガ・ントンベラ代表は、技能不足という意見に反論する。「南アフリカには十分な数の熟練ミシン工がいる」と主張し、求人が埋まらないのは賃金が低過ぎるためだと指摘。また外国人労働者の中には工場敷地内に居住している人もいるのに対し、南アフリカ人労働者にとっては通勤費も大きな負担になっていると説明した。
労働市場を研究するシフェレレ・ンギディ氏は、南アフリカ人を製造業に呼び戻すためには、政府による産業再生策が必要だとの見方を示す。その上で「問題は賃金だけではない。労働環境や将来的にキャリアアップできる可能性も重要だ」と指摘した。
<低賃金と受注減の二重苦>
ニューカッスルの衣料工場の大半は、数十年前から南アフリカで事業を営む中国系経営者が所有。これらの工場は国内小売業向けに衣料品を生産しており、政府も輸入依存の低減を目的として同産業を支援している。また、この産業はニューカッスル地域経済を支える重要な存在でもある。
だが、多くの工場では出来高払い制度が採用されており、最も生産性の高い労働者でなければ時給30.23ランド(1.83ドル)の法定最低賃金に達しない。大半の労働者が得られるのはそれを下回る収入だ。
もっとも工場経営者らにも、小売業者が衣料品を非常に低価格で仕入れるため、自分たちも賃金を引き上げる余裕がないとの言い分がある。ジーンズ1本の取引価格は11.50ランドから、Tシャツではその半額以下になることもあるという。
業界は今年2月、当局による査察で一部工場において違法な労働慣行が発覚したことで大きな打撃を受け、リウ氏によれば、この問題を受けて多くの工場が小売業者からの受注を失った。
受注減により、退職した労働者をすぐに補充する必要性は薄れたものの、受注減と人手不足が重なれば、一部工場は経営の限界に追い込まれてもおかしくない。その結果、新たに職を得る南アフリカ人よりも、職を失う南アフリカ人の方が多くなる恐れがあるとリウ氏は警告する。
リウ氏は、自身の工場も現在は赤字操業だと打ち明け、12月までに事業継続か閉鎖かを判断するつもりだという。「今は誰もが様子見の状態だ。今後数カ月のうちに、多くの工場が閉鎖に追い込まれる可能性は十分にあると思う」と語った。












