Toby Sterling
[アムステルダム 28日 ロイター] - 中国企業が先端半導体製造に不可欠な技術である国産の液浸深紫外(DUV)露光装置の量産を開始したことを受け、欧州の上場企業で時価総額首位に浮上したオランダの半導体製造装置メーカーASMLが2つの面から包囲網が狭まっている。
トランプ米政権による中国へのハイテク製品の輸出規制が、主要市場となっている中国へのアクセスを制約する一方、半導体製造などの分野で技術的自立を目指す中国の動きによって、中国に競合他社が出現する可能性が高まっているからだ。
ロイターは28日、実態がほとんど知られていない国有企業、上海アイシェンナ・エレクトロニック・テクノロジー・グループ(上海愛晟納電子科技集団有限公司)が中国で開発されたDUV露光装置の量産を始めたと報じた。トランプ米政権が中国に対するハイテク製品の輸出を規制している中で、DUV露光装置は中国企業が先端半導体を製造するのに不可欠な技術となっている。
ASMLはDUV露光装置に加え、より先端的な機種であり、人工知能(AI)向け半導体の回路形成に用いられる極端紫外線(EUV)露光装置の市場を独占している。報道を受けてASMLの株価は2日間に約10%下落し、600億ユーロを超える時価総額が吹き飛んだ。
ASMLは露光装置の中級製品であるDUV露光装置を含めたリソグラフィー装置の世界市場で圧倒的な地位を占めている。中国は現時点で、最高性能の半導体の製造に必要となるASMLの最先端EUV露光装置を製造することも、入手することもできない。
メディアのジ・インフォメーションによると、中国は2026年にDUV露光装置を5台製造し、27年には生産台数を20台に引き上げ、中国の主要な半導体メーカーに販売する計画だと報じた。これはDUV露光装置を25年に131台出荷したASMLにはるかに及ばない。
このためJPモルガンのアナリストらは顧客向けのメモで、ASMLへの中期的な影響は限定的にとどまるとの見方を示した。一方で「これは中国の装置の自給自足に向けた動きを示す新たなデータであり、ASMLの中国での売り上げに対する長期的なリスクを高めている」とも指摘した。
スイスクオート銀行のアナリスト、イペク・オズカルデスカヤ氏はより悲観的な見方で、中国の競合他社がDUV露光装置で台頭してASMLの市場での支配力を崩すことになれば、同社にとって「悪夢のようなシナリオ」になり得ると言及した。
ASMLは今月、2026年の売上高のうち2割に当たる90億ユーロ程度が中国向けになるとの見通しを示した。
米議会では、上海愛晟納電子科技集団が狙いを定めている分野であるDUV露光装置を巡り、ASMLの残りの製品の輸出を阻止する可能性がある法案の導入が審議されている。
オランダのライデン・アジア・センターの研究者サンネ・ファン・デル・ルフト氏は「この事態が示しているのは、米国の輸出規制が中国の露光装置技術の事業としての正当性を生み出すことに成功したということだ」とし、「それは当初意図したものではなかったが、結果的にそうなったのだ」と指摘した。
しかしDUV露光装置を市場に投入しても、ASMLと競合できるレベルに達したことを意味するわけではない。ASMLは過去20年間にわたって装置の歩留まり率とスループットを着実に向上させることで、DUV露光装置分野で圧倒的な地位を築き上げた。これにより日本のニコンやキヤノンなどの競合他社を市場から排除してきた。
上海愛晟納電子科技集団のDUV露光装置は改良が求められている。それでも導入するメーカーは、通常なら生産性の低下に直面し、半導体1個当たりのコストも高くつくことになる。
ファン・デル・ルフト氏は中国企業が「オランダの技術に長期的に頼れるとはもはやほとんど信じていない」とし、「中国の顧客にとってはこの一択なのだ」と語った。












