Kentaro Sugiyama
[東京 31日 ロイター] - 日銀が31日に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)は、基調的な物価上昇率の上振れリスクに改めて言及し、利上げ路線の継続姿勢を示した。もっとも、注目された追加利上げの具体的なタイミングや利上げのペースを示唆する内容は見当たらなかった。
今回の決定会合では、高田創審議委員が追加利上げを主張して反対票を投じた。政策委員会内に追加利上げに前向きな意見が存在することが改めて示された。
展望リポートでは、企業の賃金・価格設定行動が積極化していることや、中長期的な予想物価上昇率が引き続き上昇していることなどを踏まえ、「2%の『物価安定の目標』を超えて上振れていくリスクがある」とした。市場では、今回の展望リポートが総じて利上げ路線維持を示す内容とみる向きが多い。
その中で、市場関係者が注目したのが今後の金融政策運営に関する記述だ。マーケットコンシェルジュの上野泰也代表は、前回まで重視していた中東情勢の影響をワンオブゼムに格下げしたうえで、AI関連需要の拡大や為替相場の変動を加えた点を指摘する。
展望リポートに「グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格などの上昇や最近の為替円安が耐久財の価格上昇につながる」との説明が入り、「利上げ継続を正当化し得る根拠を増やした」と分析。「タカ派的かハト派的か、どちらか選べと言われればタカ派的という答えになる」と話す。
また、基調的な物価上昇率の上振れリスクに対応して物価を安定させる必要性を強調した点も、利上げ継続の方針を示唆しているとみる。
ただ、今回の内容を一方的なタカ派化と捉えるべきではないとの見方もある。大和証券の末広徹チーフエコノミストは、物価上振れリスクへの警戒を示した点について「表面的にはタカ派的な内容」と評価する一方、「基調物価が上振れるなら利上げするが、そうでなければ利上げを急ぐ必要はないというメッセージにも読める」と話す。
従来は実質金利の低さが利上げ継続の根拠として前面に出ていたが、今回は基調物価の動向をより重視する姿勢がうかがえると分析。「先行きの経済・物価データ次第で判断する色彩が強まった」との見方を示した。
また、一部の市場関係者が注目したのは物価目標の達成時期に関する記述だ。4月の展望リポートや6月会合の声明で示された「2026年度後半から2027年度にかけて」との見通しは維持された。物価目標達成時期に関する見方が据え置かれたことも、市場で利上げ路線維持との受け止めにつながっている。
こうした中、市場では年内の追加利上げ観測が根強い。31日時点の翌日物金利スワップ(OIS)市場では、追加利上げの織り込みが9月までに2割程度、10月までに8割程度となっている。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、今回の会合を「中立的な据え置き」と評価する。タカ派とされる高田委員の反対票は想定の範囲内だったほか、基調的な物価上昇率が2%を超えて上振れるリスクへの言及も維持されており、「利上げ路線そのものは変わっていない」という。
一方、成長率見通しの上方修正は小幅にとどまり、経済見通しに対する日銀の慎重姿勢もうかがえたという。利上げペースについて加速させる方向にも、後退させる方向にも傾いていないとの見方だ。
次の利上げ時期を巡っては見方が分かれる。三井住友トラスト・アセットの稲留氏は、インフレ対応の遅れを懸念する市場の見方を踏まえ10月の利上げを予想する。一方、マーケットコンシェルジュの上野氏は、円安対応を意識して利上げペースを加速させるのはリスクが大きいとして、12月から来年1月ごろが有力とみている。
もっとも、利上げ判断を巡っては政治との距離感も引き続き焦点となりそうだ。上野氏は「日銀のスタンスをかぎ取るには、総裁発言だけでなく高市早苗首相や片山さつき財務相の発言、さらには米国を含めた政策当局間の意思疎通の動向も見ていく必要がある」と指摘した。












