Gertrude Chavez-Dreyfuss
[ニューヨーク 31日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB) が7月29日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決定した後、米国債のイールドカーブが急激にスティープ化(長短金利差の拡大)し、FRBの信認や、インフレ抑制に本気で取り組む姿勢に対する懸念が市場で浮上している構図になった。
市場関係者の話では、短期ゾーンの利回りが低下する一方で長期ゾーンの利回りが上昇した動きは、FRBが今後追加利上げに踏み切るとの見方に対する懐疑的な姿勢を示している。ウォーシュFRB議長が29日の会見で「インフレ圧力が十分に和らがなければ、われわれはためらうことなく行動する」と強調したにもかかわらず、こうした現象が起きた。
今回のFOMCでは、3人のメンバーが利上げを支持して反対票を投じたものの、政策金利の据え置きを決定。発表直後には追加利上げ見送りが好感され、米国債利回りは全ての年限で低下した。
だがその反応はすぐにより特徴的な動きへと変化。短期ゾーンの利回りは引き続き低下したものの、長期ゾーンの利回りは急上昇に転じ、特に30年債利回りは19年ぶりの高水準まで跳ね上がった。この結果イールドカーブは大きくスティープ化し、一部投資家の間で「市場がFRBのインフレ抑制への本気度を疑い始めている兆候」と受け止められた。
クレジットサイツのマクロ・投資適格債戦略責任者を務めるザカリー・グリフィス氏は、この動きを「ツイスト・スティープナー」と表現した上で「FRBの政策決定に対する不健全な市場反応だ」と指摘した。
こうしたスティープ化の流れは7月30日も続き、2年債と10年債、さらに2年債と30年債の利回り格差はいずれも拡大した。
<問われるFRBのインフレ抑制決意>
トゥルイスト・ウェルスの債券部門責任者、チップ・ヒューイ氏は「イールドカーブのツイスト化は、市場が『FRBは積極的な利上げサイクルに入るつもりはない』と考えていることを示している。それは景気にとってはプラスかもしれないが、FRBのインフレとの戦いに対する不透明感を高めることになる」と語った。
複数のアナリストの分析では、FRBが今回利上げを見送った背景には、政策変更を行わなくても金融環境が既に大きく引き締まっているという判断がある。
ウォーシュ氏は、市場自体が実質的に金融引き締めの役割を果たしていると主張。投資家がFRBのガイダンス(将来の政策指針)ではなく経済指標に直接反応するようになったことで、名目金利と実質金利の双方が押し上げられているという。
実際、7月に入ってから10年債利回りは25ベーシスポイント(bp)上昇しており、3月以来で最大の月間上昇幅となっている。
<イールドカーブの動向>
一般的にイールドカーブのスティープ化は、市場が利下げ、あるいは少なくとも追加利上げが行われないと予想していることを示唆する。
通常の「ベア・スティープナー」では、全体的に利回りが上昇し、その中でも長期ゾーンの利回り上昇ペースが短期ゾーンを上回る。しかし今回は、短期ゾーン利回りが低下する一方で長期ゾーン利回りが上昇するツイスト化という、異例の形で金利見通しのかい離が生じた。
アナリストらはこの動きについて、中東情勢の緊張の高まりに伴って「FRBは7月に利上げを実施する、あるいは追加引き締めの可能性を強く示唆する」との観測を積極的に織り込む動きが巻き戻されたことも要因だと分析している。
FOMC前、市場は9月までに約25bpの追加利上げをほぼ完全に織り込み、2年債と10年債の利回り格差は前週に5bp縮小していた。
BNPパリバの米国金利戦略責任者、グニート・ディングラ氏は、今回のイールドカーブのスティープ化によって、FRBが6月の会合後に獲得したインフレ抑制への信認の多くが失われた可能性があると指摘。利上げが依然として選択肢であるとの明確なシグナルが示されなければ、その信認はさらに低下しかねないと警告する。
アジムット・グループのグローバル債券運用共同責任者、ニコロ・ボッキン氏は「市場は、ガイダンスを減らすという今回のFRBの新しいアプローチに戸惑った」と述べ、結果として投資家はインフレ懸念を強め、そのリスクを長期債の価格に織り込む動きにつながったと解説した。
市場のこうした見方が正しいのかを見極める上で、8月7日に発表される7月の米雇用統計は重要な試金石となりそうだ。
クレジットサイツのグリフィス氏は、もし雇用統計が市場予想を上回る強い内容となれば「FRBは今回利上げすべきだったのではないか」との見方が強まり、イールドカーブのスティープ化がさらに進んでもおかしくないとみている。
逆に弱い内容になった場合には、FRBがインフレ対応で後手に回っているとの懸念が和らぎ、現在のベア・スティープナーが大きく修正される可能性もあるとしている。












