Harshita Mary Varghese Anhata Rooprai
[5日 ロイター] - 米国の映画興行収入が先週末、公開初週の週末として過去最高を更新した。「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」と「オデュッセイア」(日本未公開)がそろって好調だったためだ。
ただ、業界の回復は、映画ファンが幅広く映画館に戻ったためというより、チケット価格の上昇やプレミアム上映、少数の大作公開に支えられている面が大きい。米国内の興行収入は新型コロナウイルス禍後で最高の年となるペースで推移しているが、観客数は減少している。
高予算映画が今年の勢いを維持できるかどうかは、業界の回復が「より少ない観客が、より高い料金を払って映画を見る」という構図にどの程度依存しているのかを見極める試金石となりそうだ。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによると、2026年の最初の30週間に米映画館が販売したチケットは推定4億7090万枚。2019年同期の7億4730万枚を大きく下回った。
同社のアナリスト、ウェイド・ホールデン氏は「映画館運営会社の収入増は、かなり長い間、主に平均チケット価格と売店売り上げ価格の上昇によってもたらされてきた」と指摘する。
来場者数を追跡する調査会社プレイサー・エーアイのデータも、同じ傾向を示す。7月までの米映画館来場者数は前年同期比で8.1%増加したものの、2019年比では27%減少している。
今年は「オブセッション 災愛」や「プロジェクト・ヘイル・メアリー」といった、シリーズ作品ではないヒット作を含む多様な作品が興行収入の伸びを後押しした。メディア分析会社レントラックによると、8月2日までの米国内興行収入は62億ドル(約9771億円)で、前年同期比15%増。もっとも、2019年同期の70億ドル超にはなお及ばない。
近年の興行収入は続編作品や「マーベル」「スター・ウォーズ」といった人気シリーズがほぼ独占してきた。これに対し、今年のヒット上位作はオリジナル作品や単発作品の比重が高く、観客の関心がより幅広い作品に向かっていることをうかがわせる。チケット販売サイト「ファンダンゴ」の映画分析ディレクターで、興行分析サイト「ボックス・オフィス・セオリー」創設者のショーン・ロビンズ氏は「今年の好調さは、幅広いジャンルがバランスよく並び、多様な映画ファンに訴える公開スケジュールの成果だ」と話す。
「スパイダーマン」や、クリストファー・ノーラン監督がホメロスの叙事詩を再解釈した「オデュッセイア」といった夏の話題作は、高価格帯の大スクリーンであるIMAX上映館で完売が相次ぎ、映画館運営会社にパンデミック後で最高水準の業績をもたらしている。新型コロナウイルス禍は、ストリーミングサービスの普及で自宅視聴の選択肢が広がる中、すでに進んでいた映画館離れを加速させていた。
現在、多くの観客は、大型イベント映画やシリーズ作品の公開時に限って映画館に足を運ぶようになっている。これを受け、映画館チェーン各社はプレミアム大型スクリーンの拡充や館内体験の向上を進め、家庭のテレビでは容易に再現できない体験であれば、消費者がより高い料金を支払うと見込んでいる。
初期の兆候は明るい。世界最大の映画館チェーンであるAMCエンターテインメントは、プレミアムスクリーンへの強い需要により、創業106年の歴史で単一週末として最高の売上高を記録し、入場者数でもこの10年で最大の週末となったと発表した。同社によると、AMCとオデオンの劇場には1020万人を超える映画ファンが訪れた。
インフレは映画鑑賞への支出意欲を一部圧迫しているものの、価格上昇は一部の大手スタジオに恩恵をもたらしている。興行収入データを集計するレントラックが提供したデータ分析によると、ユニバーサル・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ワーナー・ブラザース、パラマウント・ピクチャーズが、今年の国内興行収入の68%を占めている。
ハリウッドのこうした寡占化は規制当局の懸念を招いている。カリフォルニア州など12州は、パラマウント・スカイダンスを提訴し、同社によるライバル企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの1100億ドル規模の買収を阻止しようとしている。レントラックによると、仮に両社が合併していれば、先週末までの米国内興行収入の11%近くを占める計算だった。
コムキャスト傘下のユニバーサルが配給した「オデュッセイア」や「スーパーマリオギャラクシー・ザ・ムービー」といった作品の成功により、同社の市場シェアは24%まで上昇した。少数の大ヒット作が映画館運営会社の業績を一段と左右する構図が鮮明になっている。
映画興行データ分析プラットフォームのエンテリジェンスによると、7月30日までの成人向けチケットの平均価格は13.46ドル。IMAXなどプレミアム形式の平均入場料は18.22ドルだった。












