Gertrude Chavez-Dreyfuss
[ニューヨーク 30日 ロイター] - 新体制下の米連邦準備理事会(FRB)に明確な指針を求めていた投資家は、失望させられた。金利見通しを巡るFRBの相反するメッセージが株式や債券市場を動揺させ、ボラティリティー拡大のリスクを高めかねないと警戒感が広がっている。
FRBは29日、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジ3.50─3.75%で据え置いた。12人の委員のうち3人が反対票を投じたことから、アナリストは今回の決定を、将来の利上げに含みを残す「タカ派的な据え置き」と評している。
ウォーシュ新議長がフォワードガイダンスを通じて金融政策の方向性を示す慣行を放棄したことで、市場は新たな局面に入った。投資家は現在、FRBの次の一手を示すあらゆるシグナルを求めて経済指標を精査しており、こうした状況が一段と激しいボラティリティーを引き起こしかねないとの声が多い。
今回の会合では利上げ確率が約36%織り込まれていた。ドイツ銀行によると、2018年12月以来最も不確実性が高かった。
RWAウェルス・パートナーズのJP・パワーズ最高投資責任者(CIO)は「毎回の会合で、これまで以上に不透明感が積み上がっている。今のところ9月がヤマ場になりそうだが、それまでに指標がどう動くかを見極める必要がある」と述べた。
米消費者物価指数(CPI)の上昇率は6月に3.5%まで鈍化したが、FRBの目標である2%を依然として大きく上回る。同時に、今月再び激化した米国とイランの緊張が原油主導での物価上昇圧力の再燃を招く恐れがある。
ウォーシュ議長は会合後の記者会見で、直ちに行動を起こすことにコミットするわけではないと述べた上で、物価圧力が緩和しなければ今後の会合で「行動をためらわない」と強調した。
だが、ウォーシュ氏が記者の質問に答える中で、政策の不確実性への懸念はより根本的な問題によって増幅された。同氏が確固たる目標として掲げるインフレ率2%への回帰について、明確で一貫したロードマップを持っているのかという点だ。
BNPパリバの米戦略・経済部門責任者カルビン・ツェ氏は、FOMC後の長期米国債利回りの上昇は、行動すべきという市場からの明確なメッセージだと指摘。
「ウォーシュ氏が言うようにインフレに対して厳しい姿勢を取るのなら、なぜまだ行動していないのか。それが問われているようだ」と述べた。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のフェドウォッチによると、金利先物市場は会合後、9月の利上げ確率を一時77%まで織り込んだが、29日遅くには約57%に低下。年末までに約35ベーシスポイント(bp)の利上げが見込まれている。
<株式・債券の逆風に>
FRBの決定は米株式相場を圧迫した。一方、短期の米国債利回りは、会合前に異例なほど高い確率が織り込まれていた7月の利上げ観測を投資家が巻き戻したことで低下した。
アナリストによると、「タカ派据え置き」は通常、株式にとって逆風となる。借り入れコストが投資家の想定より長く高止まりする可能性を示唆するためだ。今行動を先送りすることが最終的にFRBをより積極的な引き締めに追い込みかねないと懸念する投資家もいる。
トランプ氏は繰り返しFRBに利下げを求めてきたが、29日は据え置き決定にもかかわらずウォーシュ氏を称賛した。ウォーシュ氏自身は、金融政策は独立すべきだと述べている。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの債券・マクロ担当ポートフォリオマネジャー、エド・アルフサイニー氏は、利上げ見送りによる株式への安心感について「非常に短命に終わる傾向があり、インフレが今後も続くという認識によって相殺されがちだ。特に割安とは言えない水準から出発している場合、リターンに対する影響が大きくなる」と語った。
追加利上げの可能性はリスクテークを抑制し、マネー・マーケット・ファンド(MMF)や短期国債などのより安全な資産が株式に比べて相対的に魅力的となる可能性もある。
債券市場にとっては、利上げ休止と将来の可能性が組み合わさることで、利回りに上昇圧力がかかり続ける。特に2年物国債など政策に敏感な年限でその傾向が強い。利上げは借り入れコストの見通しを押し上げ、投資家が債券を保有する見返りに求める対価を増加させる。
クレジットサイツのマクロ・投資適格債戦略責任者ザカリー・グリフィス氏は、過去2カ月間、FRBが何ら行動を起こさない中でも米国債利回りは上昇方向に再評価され、事実上FRBに代わって金融環境を引き締めてきたと指摘た。
10年債利回りは7月に約27bp上昇し、月間の上昇幅としては3月以来の大きさとなった。
こうした金利の動きは、投資家自身が金融環境を形成する度合いを強めていることを浮き彫りにしている。金利やインフレ期待の形成において、FRB当局者よりも市場がより大きな役割を果たすべきだというウォーシュ氏の考えとも整合する動きだ。
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・アローン氏は「ウォーシュ氏はフォワードガイダンスをマーケットガイダンスと交換している。市場が金利やインフレの適正水準を見つけるに任せている」と述べた。
アローン氏は、FRB当局者が最重要事項を示すのを待つのではなく、投資家が自らデータをより緻密に読み解く必要が生じたことは、「市場が再び使いこなす必要のある筋肉のようなものだ」と語った。












