Joyce Lee Hyeyoon Cho
[ソウル 21日 ロイター] - 韓国政府は6月後半、半導体とAI(人工知能)を軸とする新産業戦略を発表し、南西部に半導体クラスター(産業集積地)を構築する意向を示した。この計画は膨大な電力や水を消費するだけに、地元住民からの強い反発が最大の障壁となりそうだ。
いわゆる「湖南半導体産業団地」構想には、少なくとも800兆ウォン(約88兆円)の費用がかかると試算されている。今回の計画は、半導体ブームの波をソウル首都圏だけでなく地方へも波及させたい李在明政権の目玉施策と言える。
ただ、サムスン電子などプロジェクトに参加する企業は、稼働のための新たなエネルギー源を見つける必要があり、李大統領の任期が終了する2030年までの実現を目指している。
必要とされる電力需要は、計画されている4つの半導体製造工場だけで光州市や全羅南北道など南西部地域における現在の年間電力消費量の70―80%に相当する可能性があるとアナリストは指摘する。
地元住民はロイターの取材に対し、新たな送電線や原発の建設に反対する意向を示した。過去のエネルギーインフラ開発において、住民側の納得や合意がないまま進められてきた経緯があるからだという。
水の供給量を増やすため既存のダムをかさ上げする計画についても、事前に相談を受けていなかったと述べている。
「ほとんど電力需要のなかった地域へ、突如として巨大な電力需要が発生する。これこそが問題の核心だ」。S&Pグローバルエナジーの主席アナリストであるニール・ウォン氏はこう語った。
大規模かつ迅速なインフラ拡張がなければ、30年までにこの産業団地をフル稼働させることは困難だと専門家は指摘する。
韓国の気候エネルギー環境部は、南西部地域には既に地域需要を上回る発電能力があると説明。新たな半導体工場が同地域に建設されれば、電力の大部分を地域内で生産でき、長距離送電線の追加設置の必要性を軽減できると述べた。工場操業開始に当たっては、地方自治体と緊密に連携して電力インフラを整備し、人口密集地域では送電線を可能な限り地下に埋設するなど、住民の理解と協力を図っていくという。気候エネルギー環境部の金星煥長官も、新しい原子炉や小型モジュール炉(SMR)の建設を検討する可能性があると述べた。
<インフラのボトルネック>
ソウル近郊の龍仁市における半導体クラスター開発は、教訓とすべき事例と言える。サムスン電子とライバルのSKハイニックスは、いずれもここで半導体製造能力を拡大してきたが、電力や水の問題によりプロジェクトに遅れが生じている。
李相逸市長は、19年に初めて発表されたSKハイニックスの龍仁第1工場について、別都市の河川から日量26万5000トンの水供給を受ける予定だったが、その地域の住民からの反対によりプロセスが数カ月遅れていると説明。他の地域からの水や電力の供給についても同様の反対に遭う可能性があると述べた。
「反対意見を鎮め、意見の相違を解決する責任は中央政府にある」と李市長は語った。
政府は、2社が龍仁での建設を加速できるよう支援する予定だと述べた。
南西部の霊光郡の農家で、地元の反原発団体代表を務めるノ・ビョンナム氏によると、住民らは原子炉の運転延長や増設に対し、必要であれば訴訟を起こしてでも阻止する構えだという。
「老朽化した原子炉の寿命延長に加えて、今になって新規建設の話をするのは、霊光が核の実験場となり、最終的には恒久的な核廃棄物処分場となることを宣言するに等しい」と同氏は語った。
水供給の計画も同様に複雑だ。環境部によると、この地域では1日約65万トンの水が必要であり、これは光州市全体の1日当たりの家庭用水供給量を上回る。
開発側は再生水の利用と5つのダムシステムを活用することで、新たな大型ダムの建設を回避したいと考えている。そのうちの1つである東福ダムをかさ上げすることで、1日当たり25万トンの水を追加で確保する計画だ。
東福ダム周辺の住民団体の代表であるキム・グァンジン氏は、事業の推進にあたって事前の住民説明や協議を求めている。
「これはダム建設と同じだ」とキム氏は述べ、1500―1600世帯が直接的または間接的に影響を受ける可能性があると試算。「住民の同意を考慮しない、一方的な発表だった」と憤った。
環境部は、ダムのかさ上げであれば新設に比べて環境破壊を抑えられる上、住民の立ち退きも最小限で済むと主張。反対運動やインフラ問題によるプロジェクトの遅延を防ぐため、光州市や地元住民との協議を続けていくとした。












