Shashwat Chauhan Kanchana Chakravarty
[5日 ロイター] - 米国のヘルスケア株に投資資金が流入している。業績改善や企業合併・買収(M&A)の活発化、割安な株価水準を追い風として、長年にわたり市場平均を下回っていた同セクターの回復が続くとの期待が背景にある。
ヘルスケア株への資金流入には、投資家の資金配分の変化が反映されている。金融株にも買いが集まっており、これまで相場上昇をけん引してきた人工知能(AI)関連の大型ハイテク銘柄以外にも、物色の対象が広がりつつある格好だ。
S&P500ヘルスケア指数は過去3カ月で11.2%上昇し、過去最高値を更新。上昇率はS&P総合500種の6%を上回った。LSEGリッパーのデータに基づくと、米上場のヘルスケア関連ファンド約50本への7月の資金流入額は24億4000万ドル。6月の約15億ドルに続く流入超で、3カ月連続の資金流出から潮目が変わった。
JPモルガンのグローバル市場戦略責任者ドゥブラフコ・ラコスブヤス氏が率いるアナリストチームはヘルスケア分野について「持続的な成長性、ハイテク企業並みの収益性、魅力的なバリュエーション、分散投資効果を兼ね備えている」と指摘した。
バンク・オブ・アメリカの調査では、世界のファンド運用者によるヘルスケア株の投資比率は7月に「オーバーウエート」が差し引き32%となり、6月の14%から大幅に上昇した。
LSEG調査責任者のタジンダー・ディロン氏によると、S&P総合500種採用のヘルスケア企業の利益は2026年第4・四半期から27年末にかけて2桁成長が見込まれている。2026年第2・四半期に記録した16.7%の減益から大きく持ち直す見通しだ。
ノバーレ・キャピタル・マネジメントのジェームズ・ハーロー調査ディレクターは「ヘルスケア業界への見方は過度に悲観的だったが、最近の決算や経営陣の発言がそうした懸念を和らげた」と述べた。
製薬大手アッヴィは直近四半期決算で市場予想を上回る利益を計上したほか、医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループも予想を上回る利益を確保し、26年通期見通しを引き上げた。
M&Aの活発化も投資家の関心を集めている。ディールロジックの見積もりでは、今年これまでのヘルスケア分野のM&A総額は約2840億ドルに達し、25年通年の3060億ドルに迫っている。2021年以降では最も高い水準だ。
今週には英製薬大手アストラゼネカと米製薬大手ブリストル・マイヤーズ・スクイブが合併の可能性について協議したと報じられた。実現すれば時価総額約4000億ドル規模の世界有数の製薬企業が誕生する可能性がある。
バリュエーション面でもヘルスケア株は依然として魅力があるとの見方が多い。シチズンズ銀行の医療部門投資銀行責任者を務めるクリスチャン・ペン氏は「長期間にわたり評価が低迷していたため、投資家にとって好機がある」と語った。
ヘルスケアセクターの予想利益ベースの株価収益率(PER)は約18倍で、過去20年平均の15倍を上回る。ただS&P総合500種全体の予想PERは約20倍となっている。
一部の市場関係者は、22年のハイテク株急落時のように、資金の移動が一時的な現象に終わる可能性もあると警戒する。ただネーションワイドのチーフ市場ストラテジスト、マーク・ハケット氏は、S&P総合500種が過去最高値圏にある中で「投資家はこれまで見過ごされていた分野へ積極的に資金を振り向けている。業績改善が伴えば、その流れはより持続的なものになる」との強気の見方を示した。
11月の米議会中間選挙を控え、医療政策も市場の注目材料となっている。野党民主党が下院の多数派を奪還した場合、医療保険制度(オバマケア)の拡充や低所得者向け公的医療「メディケイド」の強化、トランプ大統領による保険適用義務緩和策への対抗措置が進む可能性がある。
その場合、メディケイドやオバマケア関連事業の比重が大きい医療保険会社や、保険加入者増加の恩恵を受ける病院運営会社に追い風となってもおかしくない。
一方でJPモルガンは、中間選挙の年には医療機器や医療サービス関連企業の株価が堅調に推移する傾向があると指摘しつつも、今年は医療政策に大きな変化はないとみている。
グレート・バレー・アドバイザー・グループのチーフ市場ストラテジスト、エリック・パーネル氏は「議会の勢力が拮抗する状況は、企業収益を圧迫する法案の成立リスクを低下させるため、ヘルスケア株にはプラス要因となる」と述べた。












