Rae Wee Ankur Banerjee
[シンガポール 3日 ロイター] - 米国と日本による異例の協調為替介入によって、円安に賭ける投機筋への重圧は強まっている。しかし市場関係者の間では、日銀が金融引き締めを一段と進めない限り、投機筋を長期的に抑え込むのは難しいとの見方が根強い。
最大の焦点は、日銀が今後さらに利上げを加速させるかどうかになる。なぜなら、依然として日本と米国の大きな金利差こそが円安の主因と考えられているからだ。
日本政府は4月下旬から5月上旬にかけて700億ドルを投じて円買い介入を実施したが、その効果は長続きしなかった。これは日本単独で為替介入を行った2024年や2022年と同様の展開だった。
ただ今回は、日米が15年ぶりに協調介入に踏み切ったことで状況は異なる。当局は、日米が足並みをそろえて行動することで、過去の単独介入以上に投機筋への抑止効果が高まると期待している。
週明け3日のアジア市場では円が対ドルで一時1%上昇。1ドル=155円20銭と約3カ月ぶりの円高水準となり、7月に記録した約40年ぶり安値の163円99銭から大きく持ち直した。
また日銀の政策動向に最も敏感な2年国債利回りは3日に1.54%まで上昇し、1995年5月以来の高水準となった。
<円売り勢への強い警告>
市場関係者の話では、今回の協調介入は約2年ぶりの高水準に積み上がっていた円売りポジションの買い戻しを誘発した。日銀による追加利上げなどの政策対応への警戒感も高まっている。
HSBCのアジア担当チーフエコノミスト、フレッド・ニューマン氏は「日銀による予想外の利上げが実施されれば、日銀の金融引き締めに取り組む決意に関する市場の見方を大きく変えるだろう。米国と日本による協調介入は市場に対する非常に強力なメッセージだ。しかし金融政策面での補完的な対応がなければ、円高効果は一時的なものに終わる可能性が高い」と述べた。
イランを巡る戦争に起因する原油価格の大幅な変動や、日本と主要国との金利差の大きさを背景に、円は依然として弱い立場に置かれている。投機筋の円売り持ち高は約125億ドルに達しているという。
こうした中で日米両政府は3日、先週実施した円買い介入が協調介入だったことを正式に認め、円安進行への危機感が一段と強まっていることも浮き彫りになった。
ロンドンのブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)でグローバル市場戦略責任者を務めるエリアス・ハダド氏は「歴史的に見ても協調介入には大きな効果があり、成功するケースが多い。ただし市場トレンドが介入の方向へ転換するまでには時間がかかる」と語った。
さらに今回の特徴として、市場ではベセント米財務長官が円安への懸念を明確に表明している点が注目されている。フランクリン・テンプルトン傘下BGIMのポートフォリオマネジャー、キャロル・ライ氏は、これが円高持続への信頼性を高めていると指摘する。
ベセント氏は、米連邦準備理事会(FRB)が提供する一時的なドル流動性供給制度である「FIMAレポ・ファシリティー」の規模拡大を今後数カ月で検討する可能性があるとも発言し、この制度を「重要な安全網」と位置付けた。
ライ氏は「FIMAレポの拡充を通じて、日本はより大規模な介入余力を得ることになる。1回あたり約5兆円規模の介入を前提とすると、最大で30回程度の追加介入が可能になる」と分析した。
野村証券も、日本政府には最大30兆円程度の介入余力があり、相場を154円程度まで押し上げることで、モメンタム重視の投資家の動きを誘発できる可能性があるとの見方を示した。ロイターが確認した同社の顧客向けレポートには「これが機能すれば、ドル円相場は150円方向への動きを加速させてもおかしくない」と記されている。
<日銀の後押しも必要>
それでも一部のアナリストは、政策当局による追加対応が伴わなければ、介入による円高効果は長続きしないとみている。円安の背景には、日銀が利上げに慎重な姿勢を維持してきたことがあるとの声も聞かれる。
日銀は7月31日までの金融政策決定会合で、基調的なインフレ率が目標を上回る可能性を初めて明確に示した。また今後の議論は物価上振れリスクに重点を置くと表明し、最短で9月にも利上げが実施される可能性を示唆した。
この決定の直前に、日本政府がニューヨーク市場で円買い・ドル売り介入を実施。HSBCの為替ストラテジスト、ジョーイ・チュー氏とポール・マッケル氏は「日銀がより速いペースで利上げを進めること、そして政府が円相場に対するより明確な姿勢を示すことに加え、財政拡張路線を弱めない限り、ドル円相場の持続的な下落トレンドを予測する自信は持てない」と述べた。
円弱気派からは、今回の協調介入は円相場の長期的な見通しを変えるものではなく、最安値を試すタイミングを先送りしたに過ぎないとの見方も出ている。
BNPパリバのアジア新興国金利・為替ストラテジスト、チャンドレシュ・ジェイン氏は、今回の円高局面を利用してオプションを通じたドル買い・円売り戦略を取る好機だと話す。
同氏は「基本的にはドル円を買う戦略だが、上値は163円50銭程度で抑えられると考えている。以前はドル上昇のスピード自体が問題視されていた。しかし今回は上昇ペースよりも、特定の水準が問題視されているように見える」と指摘。その上で「これまで160円付近で何度も介入が行われ、今回は164円近辺で介入が実施された。当局は上昇速度というより、こうした水準自体を警戒しているようだ。これは過去とは異なる特徴だ」と付け加えた。












