Kentaro Okasaka
[東京 22日 ロイター] - 日本政府が主導する国産フィジカルAI(人工知能)開発計画「FRONTia(フロンティア)」が今月、本格始動した。プロジェクトの中核となる基盤モデル開発を担う新会社Noetra(ノエトラ)の丹波広寅社長がロイターのインタビューに応じ、生産現場などの知見が必要なフィジカルAIは生成AI開発で出遅れた日本にとって「ラストチャンス」だとの認識を示した。「まだ確固たる勝者がいない分野で、非常にチャレンジし甲斐がある」と述べ、海外のモデルに依存しない国産基盤の構築に意欲を示した。
経済産業省は16日、都内で「FRONTia」のキックオフイベントを開催。高市早苗首相はビデオメッセージを寄せ、フィジカルAIは「日本に強みのある産業現場に蓄積された重要データが競争力の源泉となる、日本の勝ち筋となる技術分野だ」と強調した。FRONTiaを「日本再起の旗印としていこう」と呼び掛けた。政府は2040年に国内の製造業や造船、介護や防衛など18分野で1000万台のAIロボットを導入する構想を掲げる。
ノエトラはソフトバンクとNEC、ホンダ、ソニーグループの4社が中核となって設立した。現時点で4社を含む国内の製造業やメガバンクなど計44社が出資する。AI開発に取り組んできた企業も含まれ、エンジニアを出向させるなど協力体制を敷く。ソフトバンク常務を兼ねる丹波氏は「1社では決してできるものではなく、相当力強いと思っている」と自信を示した。ノエトラなどのコンソーシアムに政府系機関が5年間の事業を委託。初年度は約3800億円を支出する。
フィジカルAIはインターネット上にあるテキストなどで学習させる「大規模言語モデル(LLM)」と違い、センサーなどで検出した状況をもとにAIがロボットを動かす。丹波氏は、AIの判断をロボットの動作に落とし込む技術は「すごく難しい」と説明。「ロボットを制御し、フィジカルな製造ラインを制御するために必要なデータはネット上にはなく、現場にしかない。そのデータをどう適用すれば産業に活きるAIができるかという試行錯誤はこれからだ」と語った。
丹波氏は、これまでは自社のAIを開発する企業は米国や中国のモデルに依拠し、企業秘密に近いような産業データを渡すことを余儀なくされるケースもあったとし「透明で安心、安全に使える基盤モデルに自分たちの情報を加え、データを自分たちで管理できるんだというのが企業側に必要な安心感だ」と国産開発の意義を語った。その上で、年度ごとに目標値を設定し、他国のモデルと比べて劣後しないように取り組んでいく方針を示した。
完成したモデルは中身の構造が分かるような形で日本企業などに公開し、企業はこれを基に自社のフィジカルAIを開発する仕組み。丹波氏は「国のプロジェクトとして作り、日本のデータが入っているモデルなので、誰にでも公開するわけではなく、一定の公開管理はする。同じ法規制、商習慣の中で使える人に対して公開する」と語った。
ノエトラは、米エヌビディアからAI半導体「ルービン」約2万7500基を調達する予定。21日のイベントでは、丹波氏が同社のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)と壇上で握手を交わした。フアン氏は「日本は国家の知能をアウトソーシングすべきではない」として国産AIの開発を呼び掛けた。
*21日にインタビューしました。












